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「お化け階段奇譚」裏話のようなもの

こんばんは、暇崎ルアです。
「SARF×カクヨム」コンテストを受賞した「お化け階段奇譚」に、皆様から多くの反応を頂いております。
ありがとうございます。

ここ数日、皆様から頂いた本作へのレビューを紹介する場になっている近況ノートですが、今回は拙作を書くまでの裏話のようなものをエッセイテイストで書けたらと思います。
「需要ある?」ともう1人の自分がツッコミを入れているのですが、せっかくなので(笑)。

この先本編のネタバレを含みますので、もし未読の方がいたら作品をお読みになってもらった上でこちらに戻ってきて頂きますようお願い致します(さりげなく宣伝)。
作品はこちら↓
お化け階段奇譚 - カクヨム https://kakuyomu.jp/works/16818093073628131635

ではでは、振り返っていきますよ。
「SARF×カクヨム」コンの詳細を知ってから「お化け階段で書きたい!」とは思っていたのですが、どんな筋書き、どんな怪異にしようかは決まっておらず、頭の中でモヤモヤとするばかり。
さあ、どうしよう?
やることは一つ。
「現地に行こう」
創作者に取材は必須ですからね。

コンテストの応募は始まった3月半ば。
行こうと決めた日は午後に予定があったので、午前中のうちに見ておこう、と家を出たところ……。

土砂降りの雨でした。

「事前に天気予報確認しとけよ!」という話ですね(笑)。
「やっぱり別の日の方がいいかな…」という諦めが頭をよぎったのですが、「いや、早く見に行って執筆したい!」という想いが勝ってしまい、足は根津へと向かう地下鉄の最寄り駅へと歩いていきました。

さて、電車を降りて根津駅。
容赦なく傘を打つ雨の中、根津神社の境内でお参りを済ませ、たどり着いたお化け階段。
誰もいませんでした。
大通りに面していない場所にあるので、元々人の行き来は少ないのですよね。
人っ子一人おらず、うるさいぐらいにただ雨の音が耳朶に響くのみ。
なんだか独特な雰囲気を醸し出しており、少しだけ怖くなってしまいました。

しかし、ここまで来て帰るわけにもいきません。
電車賃片道約数百円とはいえ、バカになりませんので(笑)。
私が一番確かめたかったことはひとつ。

「40段あるという段数は本当に変わらないのか?」

作中で「岡やん」が言っていた通り、段数が変わるのは人間の錯覚だというのはちゃんと知っていたのですが、「もし、変わってしまったらどうしよう?」なんてことも、びびりの私は考えてしまい、階段の前でうろうろ。
雨の中、誰もいないお化け階段の前で一人うろつくやつなんてそれだけでもう怪しかったでしょうね(笑)。

しかし、グズグズしていてもしょうがないし、時間だけが経っていくので、意を決して階段を数えることにしました。
事前情報として知っていた「数え間違いの元となるのは、1段目の高さが低いから」という話が事実であることを自分の足で確認しました。
ひたすら頭の中で数えながら、上へ上へと上っていきます。
29、30、31……。
一番上へと達しました。数はちゃんと40段。
あとは今と逆に階段を降りながら、数を数えるだけです。
1、2、3……。

階段を数えながら、ある遊びを思い出していました。
そう、「グリコ」です。じゃんけんをしながら階段を行きつ戻りつする遊び。
……ああ、そうだ。

「怖い噂がある階段でグリコをやったら何か起きてしまうのでは?」

「これいいんじゃない!?」とアイデアをひらめいた喜びでいっぱいの私でしたが、同時に今何段目なのかは綺麗さっぱり吹き飛んでいました。
途中の踊り場を越えていたので、戻らなければいけないというのがその時一番の恐怖でした。

気を取り直して階段の最上階。
1段目からもう一度数えます。
今度は最後まで、高さが低くて間違えやすい1段目も認識し、下りきりました。
ちゃんと40段ありました。
ほら、やはり怖いことなんて何も起きない。ただの噂。

しかし、私はあることに気づいていました。

「上ったり下りたりを繰り返すと、階段に閉じ込められたような気分になるな」

こう考えると「グリコ」とは怖い遊びだと思いませんか?
負け続けると、場所と場所を繋ぐだけの移動通路「階段」からずっと出られない。
また「学校の怪談」などでは、階段から異世界に繋がってしまうというものもあります。
「階段は異界に繋がる」というには、こういう体験ができることから来ているのかもしれない。
私はこの恐怖を語り手の「僕(和樹)」に味わってもらうことに決めました。

そして、私の頭の中では少しづつ「謎の少女が立つ異世界へと繋がる階段」という光景も見えてきました。
コンテストの作品にピッタリの季節は夏。
「あの世」と「この世」が最も近づく季節も夏。

その頃、ほかの作品のために読んでいた資料で「イザナギとイザナミ」「黄泉比良坂」の伝説を読んだばかりでした。
ストーリーが生まれ始めます。
お彼岸の季節、この世へとさまよい出るイザナミ。
今はもう二度と会えない夫を懐かしみながら、もし夫によく似た男を見つけたとしたら?
こうして生まれたのが「イザヨイカナミ」です。
あとはもう家に戻って、キーボードを叩くのみ。
そして、現在に至ります。
夏が近づいて来ていますね。
果たして一体どうなるでしょうか?

……思いのほか長くなってしまいました。物書きとしては褒められたことではありませんね。
「お化け階段奇譚」の裏話のようなものは以上となります。
最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
夜も深いので、おやすみなさいませ。

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