小学六年生の若さで回想シーンもないなと思い、次のパートを没にしました。
午前十一時二十五分(徒競走)
低学年生が本部前のコースで徒競走を行っている。
二十メートルの距離を走り切った一年生は全員に賞品がおくられている。うらやましい。
ぼくも虹小に入った頃は、あんなに小さかったんだなと思った。
ぼくは、一年生、二年生の時も二組だった。飛沢さんも二組だった。二年生の時に、ぼくの前の席が飛沢さんだった時がある。
飛沢さんは、授業中に後ろを振り向いては、ぼくの教科書や学習帳に落書きをしていた。ぼくは、それが嫌でもなかったので、怒ったりはしなかった。
音楽の時間に『おぼろづきよ』のレコードを聞いていた時、いつものように振り返って、教科書の月のイラストに目と口を描きこみ「すきよ、ばーか」と吹き出しを付けた。音楽の教科書は、今もそのままに残っている。
三年生になり、ぼくは二組のままだったが、飛沢さんは三組になった。三年生、四年生と別のクラスになって、話をしたり遊んだりすることもなくなってしまった。
五年生に今のクラスになり、うれしかった。
そんなことを思い出しているうちに、二年生の徒競走は終わり、高学年生集合の放送が聞こえてきた。