昼寝は悪夢が多い。
私の祖母も、母も、妹も、同じことを言う。
つまり私には昼寝の血が流れている。
ちなみに父が昼寝をしているところは見たことがない。
どうやら世の中には、何が何でも昼寝を求めてやまない人種と、昼寝に一切の必要性を感じない人種がいるようである。
これは私の6年間の社会人生活で観察された客観的データを元に導き出された推察である。
無論、近年は都心の大企業などで、昼寝タイムというのを設けているのだと朝の情報番組で知った。
名だたる脳科学者も、仕事の効率アップのために15~20分の昼寝は有効だという。
お昼寝枕というのも紹介されていた。なんと、腕にはめる枕である。腕にはめて机に突っ伏すための枕である。私は震えながら問う。「腕は痺れないのか。」
ぬるいことを言うな、そんなの無理に決まってるじゃないか。と朝の私は叫ぶ。
昼寝の血を持つものとしては、昼寝の定義は「無期限の怠惰」に等しい。
期限を設けられ、アラーム設定を余儀なくされる睡眠なぞ昼寝ではない。
そもそも昼休みの15分で眠りにつけるものだろうか。
なんとも我儘勝手な主張をしていることは重々承知である。
たった15分であろうと昼に寝たら昼寝である。
しかし昼寝の血が流れている者なら同意いただけるだろう。
午後の布団の誘惑。
昼食の後、再び空腹を感じるまで寝るという覚悟。
一日を無駄にしてしまったという心苦しさ。
日の影りを感じる窓からの光。
これらの一切を含めて昼寝である。
我ながらこの減らず口をどうにかしたいものだ。
そんなことはさておき、
昼寝には悪夢が多い。
なぜなのだろう。
白昼から睡眠を貪る罪悪感からか。
然るべきでない時に強制的に休息を強いられる脳のストライキか。
周囲の明るさがノンレム睡眠への速やかな移行を妨げるからか。
一説には、一時間以上の昼寝は心筋梗塞などのリスクを著しく上げるとある。
生体の自己防衛反応で睡眠を不快にさせているのだろうか。
いずれにせよ、悪夢を見るとわかっていても、昼寝はやめられない。
夜より昼に寝るのが好き。
もちろん、休日の午後限定で。