📕「付与魔術師カルマは今日もどこかでやさぐれる」(短編全8話)
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https://kakuyomu.jp/works/16818093082887656161🌠恵まれない付与魔術師に愛の手を! あと、十九歳のイケメンも……🌠
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カルマの仕事は付与魔術師。剣や槍などの武器に魔術を付与して、攻撃力を上乗せする。
しかし、武器が付与魔術を受け入れる回数には限界があった。上限回数を超えると、その武器は破壊されて粉々になる。
「あと一回! あと一回だけ頼む!」
そういって粘る客を断り切れず、カルマがかけた魔法で名剣が砕け散った。
客は絶望し、その怒りはカルマに向けられる。
「あたしのせいじゃない!」
そう叫びたいが、客を怒らせたら商売にならない。カルマは怒りを抑え、唇をかんで客の罵声に耐える。
「ちっ! やってらんねえっての!」
客が立ち去った後は、安酒を飲んでやさぐれるカルマの姿があった。
「武器が持つ魔術付与の限界を見極められれば、壊さずに済むはずよ」
カルマは一念発起し、鑑定魔術を探す旅に出る。魔法書、スクロール、エルフの古老、ダンジョン、古代都市遺跡。
カルマは鑑定魔術を求めたが、どれも空振りに終わった。
ある日カルマは、「武器の声を聞こう」と古道具屋で真っ赤に錆びた刀を手に入れた。ところが慎重に錆を落として刀身を清めてみると、見たこともない美しい刀身が現れた。
「なんて美しい刃紋。山上の湖を覆う朝もやのように神秘的な『にえ』。それでいて地金は力強く、形は素直で飽きがこない。これが人だったら、天下の美男子ね」
『随分とほめてくれるね。いささか照れ臭いのだが』
なんと! 刀がカルマの頭に直接語りかけてきた……。
その日からカルマと「妖刀朝霧」の不思議な旅が始まった。