📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
(「第4回一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞(コミックポルカ)」受賞)
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346+++++
🎬「ハリウッドよ、これが異世界ファンタジーだ!」✨
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📖「第583話 それを『信念』と言います。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16818093083006563341📄「でも、その9年が無意味だったとは思いません。嫌いな仕事でも手を抜いたことはありません。魔法師として生きる今の自分の糧となっている。そうも思います」
「お前と俺では過ごした日々が違う……」
「もちろんです。過ぎた時が取り返せない以上、嘆いても意味がない。違いますか?」
18歳のステファノと向かい合い、25歳のクリードが守勢に立たされていた。なぜ自分が引け目を感じなければならないのか、クリードにはわからなかった。
「過去を悔やんでも、自分を憐れんでも現状は変わりません。未来の道が開かれることもない。それこそが意味のない行動だと言ってるんです」
ステファノの言葉は容赦なかった。クリードの現実逃避に指をさし、ぐいぐいと鼻先に押しつける。
「俺にどうしろと言うんだ?」
「どうも言いませんよ。酒でも食らって頭を空っぽにしたらどうですか? くだらないことを考えるより余程マシでしょう」
「……糞っ」
クリードは椅子を蹴る勢いで立ち上がった。ステファノを睨んではいたが、飛び掛かることはなかった。
一瞬何かを言いたげに口を開いたが、結局思い直して踵を返し、部屋を出て行った。
「厳しいことを言い過ぎたでしょうか?」
「いいえ。すべて彼自身が一番強く思っていることでしょう」
終わってみればかたきを求める9年の歳月はまったく無駄なものだった。それは自分の手でヤンコビッチ兄弟を討ち果たしたとしても同じだったのだ。
「だが、クリードさんが追わなければ誰も兄弟を倒せなかったかもしれない。わたしたちはたまたま機会に巡り合っただけのこと」
「人生に意味を求めるのは無駄なことでしょうか?」
ステファノは若者らしく性急に答えを求める。マルチェルはゆっくりと口を開いた。
「さて、どうでしょう。過去を振り返って意味を求めるのはむなしいこと。それよりも意味のある未来を求めて今を生きる方が有意義でしょう」
「意味とは未来に求めるべきもの――」
「過去を選ぶことはできません。未来には無限の選択肢がありますからね」……
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お楽しみに。