📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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🏆「第4回一二三書房WEB小説大賞/コミカライズ賞(コミックポルカ)」受賞!
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📖「第580話 アレは『飯屋のせがれ』だ。」
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📄「えっ? 何する?」
斬りつけられる恐怖を覚えて、サントスはのけ反りながら後ずさった。
「はっ! す、すまん。危害を加えるつもりはない。話を、話を聞かせてくれ!」
剣士は剣の柄から手を離し、太ももに擦りつけた。よく見ると、小刻みに手が震えている。
「俺はサントスという商人です。あなたは?」
「俺はクリード。護衛や用心棒の仕事をしている」
ようやく互いに名乗り合い、サントスはどうやら危険はなさそうだと判断した。ギフト「バラ色の未来」がそう告げている。
放り出してしまった水筒を拾い上げ、サントスは剣士クリードに声をかけ直した。
「立ち話もアレですから、座りましょう」
自分から草むらに腰を下ろし、横にすわったクリードに水をすすめる。クリードは素直に水筒を受け取って、のどを潤した。
「あの紋章はネルソン商会から預かっているものです。俺自身はギルモア侯爵家とは縁がありません」
「ネルソン……」
水筒を返しながら、クリードは呆然とネルソンの名を口にした。
その目はサントスを見ていない。
「ええと、そのヤンコビッチ兄弟がどうかしたんですか?」
「ヤンコビッチ兄弟は俺の家族を殺したかたきだ」
クリードは感情の抜け落ちた声で言った。
「ギルモア家所縁の者が2人を討ち果たしたと聞いた。俺はそいつらに話を聞きたい。兄弟はどうやって死んだのか?」
「それを聞いてどうするんですか?」
「……わからん。この手で奴らを殺すことだけを考えて生きてきた。どうしていいか、俺にはわからない」
クリードは両手で顔を覆った。
サントスは、逞しい剣士の肩が小刻みに震えているのを見た。……
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お楽しみください。🙏😊