📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346ご愛読&応援ありがとうございます。🙇
🖋明日の土曜日、新エピソードを公開します。
📖「第559話 技とはすべてそうあるべきものです。」
📄日々怠らぬ修練は体幹を始め、全身の筋肉を鍛え上げていた。スピード、パワーの両方が以前とは別物になっている。
既にステファノは純粋な体術だけでも中級クラスに達していた。
「よく鍛えましたね。おそらく独り修行で到達できる限界まで来ているでしょう」
「これからは相手がいないと上達しないということですか?」
「武術は他人を相手に戦う技術です。自分の動きをコントロールできるようになったら、敵の動きをコントロールすることが課題となります」
「初めて俺に技を見せてくれた時のようなことですね」
あの時、マルチェルは指1本でステファノを宙に飛ばした。それは「パンチを出す」という行為にステファノの意識を向けさせた、言葉による誘導が基になっていた。
「あの時は『|呪《しゅ》』の実例を見せました。敵のコントロールはそれ以外にもやり方があります」
体の動きや目線によるフェイントも敵を誘い、だますための手段である。受けの手1つでも、攻撃の方向をそらせたり、リズムを狂わせたりする駆け引きがある。
「敵を乱し、己を整える。技とはすべてそうあるべきものです」
「それを学ぶには相手が必要なんですね」
「1人でできることには限界があります。わたしがいる時は、わたしが相手を務めましょう」
ウニベルシタスへの「帰還」は、ステファノにとってまたとないタイミングだった。独り稽古の限界に突き当たる前に、マルチェルという指導者と再会できた。
「ありがとうございます、師匠」
ステファノは深々と頭を下げた。
「次はヨシズミに杖術を見せてみなさい」
マルチェルに促されて、ステファノは長杖を手に取りヨシズミと向き合った。
「いい体つきになったナ」
目を細めてヨシズミが言う。……
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マルチェルに続いてヨシズミを相手にステファノは修行の成果を披露します。
それはステファノ自身が自分の立ち位置を再確認する行為でもありました。
お楽しみに!🙏😊