📖第548話 縁を大事にしていれば、間違いないだろうぜ。
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16818093078103803738+++++
📄料理をするのにも、ステファノは魔法を使わなかった。魔法を使えば火起こしも、水の用意も不要なのだが、そこは普通の手順で行った。
魔法を隠すつもりはないが、意味なく見せびらかす必要もない。事によっては余計な面倒を招くことになるかもしれないのだ。
ヨシズミが魔法を人に頼られて断り切れない深みにはまった苦しさは、十分に想像できるステファノだった。
「食べられますか?」
「どうだ……。口を開けてくれ」
ステファノから器を受け取ったのはポトスだ。自分では食器を持つ気力さえないアーチャーを抱き起し、口元にスプーンを運んだ。
食欲がないというアーチャーのことを考え、かゆは重湯に近いほど薄く、軽い塩味以外つけていない。
「ふ。ん……ん」
一度にほんの数滴ずつ。食べるというより口の中で溶かすように、アーチャーはかゆを取り込んだ。
食べなければ回復しない。そのことにしがみつくような姿だった。
30分以上かけて、カップに半分ほどのかゆをアーチャーは体内に取り込んだ。
ずっとそれにつき合い切ったポトスは、大柄な見かけによらず繊細な男なのかもしれない。
「手持ちに胃腸の薬があるんですが、飲んでみますか?」
ステファノは背嚢から薬包を取り出しながら、目を閉じて休んでいるアーチャーに尋ねた。
薬はアカデミー入學に際してネルソンから持たされたものだ。胃腸の薬だけでなく、頭痛、風邪、切り傷などの薬が一通り揃えられていた。
幸いにもステファノはどの薬にも世話になっていない。
実はこの程度の薬ならば、医療魔法で薬効を再現できる。ステファノはアカデミーの授業でそこまでの経験を積んでいた。しかし、それを行えば魔法師としての存在感が目を引いてしまう。薬があるなら、それを使うに越したことはない。
効果は同じなのだから。……
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お楽しみください。