📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346📖第542話 そういうところでも気の弱い人だったんだよ、じいさまは。
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📄「死刑囚に刃物を持たせちまったのさ。どうなるかわかるだろ?」
手足のいましめを切った罪人は、役人と処刑人を滅多刺しにしたのだ。
血まみれのまま処刑台を飛び降りて逃げ出したが、すぐに衛兵に追いつめられて斬り捨てられた。
「首つり縄の点検が甘かったと問題になってね」
「ああ、それでお爺さんが……」
「そう。処刑人も死んでしまったもんだから、お前がやれと任されちゃったのさ」
気の弱い人間だったので、とても務まらないと断った。しかし、相手は役人だ。
他に人がいないと押し切られてしまった。
「そういうところでも気の弱い人だったんだよ、じいさまは」
さすがに衛兵隊長も気の毒だと思ったらしい。
「処刑人の仕事を未来永劫うちの家業としてさし許すという書付を、内務卿名で作ってくれたんだって。――ここだけの話、迷惑な話だよ」
一子相伝の処刑人になどなりたいはずがない。といって、国の命令では断るわけにもいかない。
「うちの家では子どものころからお役目のことを教えられ、『お務め』として慣らされるのさ」
「慣れるものですか?」
ステファノはこらえきれず、尋ねてしまった。
「――慣れないよ。いや、心の一部は麻痺しているのかな? それでも、頭を空っぽにして『お務め』を果たすことだけを考えるようにしないと、やっていけないのさ」
鎧を磨き終わったジェラートは手をぬぐいながら、声の調子を変えた。
……
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お楽しみください。🙏😊