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📖第534話 こうなったら持久戦だ。
https://kakuyomu.jp/works/16816927863114551346/episodes/16818093076088884276

📄「散らばって逃げろ!」

 猟師の長は腹の底から声を出して、全員に退却を命じた。仲間想いの若者が、河原に座り込んだ男を助けに走った。
 それを構っている余裕は誰にもない。とにかく今は逃げて、命をつなぐことだけを皆考えていた。

 クラウスは木々の間を縫うように走った。

 直線では熊のスピードにかなわない。突然方向を変え、後を追う熊がスピードを落とさざるを得ないように進路を取った。
 それでも熊は着々と背中に迫って来た。茂みをかき分ける音、立木をへし折る音、叩きつける足音。

 激しい息づかいまで感じられるようになったところで、クラウスは逃走を諦めた。
 目の前に迫った立ち木を駆け上がり、そのまま飛んで隣の木に取りついた。

 ガツッ!

 一瞬遅れて飛び込んできた人食い熊が、そのまま立ち木に激突した。樹皮をまき散らしながら、勢いのままに数メートル転がって行く。

 片目を潰されて距離感を失ったため、立木との衝突を避けられなかったらしい。

「――ガウッ」

 熊は怪我をした様子もなく起き上がると、逃げた敵を求めて周囲を見回した。片目のせいで普通より大きく首を動かさねばならない。
 右目が樹上に逃れたクラウスを見つけた。

「グワァア―!」

 木に駆け寄り、伸び上がって手を伸ばすが、クラウスは既に3メートル以上の高さに上っていた。

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📕「飯屋のせがれ、魔術師になる。」
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