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続けて新作 ミニ小説第八話

こんばんは。
夏の終わりの台風のように、
うつりと新作ラッシュが始まる・・・かもしれません。

今回は新人ではなく、うつりとの中ではベテランの方です。
何作も書くとだんだんネタが尽きる、とおっしゃって巻いたが、今までとは全く違うジャンルを書かれており、
かつ、うつりとでは誰も挑戦していない内容です。
ファンタジーのカテゴリーではありますが、ありきたりな異世界転生モノではないのが、うつりとの特徴です。

すでに新作が出来てる新人もいるのですが、
どうやらここで発表するのが恥ずかしいようです。
なんとかわいいのでしょう。
みなさんがリクエストしてくれたら、
その方も発表する気になるかも。
よろしくお願いします。




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ミニ小説
「文芸部的な、余りに文芸部的な」
寝手場架莉

「え? 兼本さんがフランスへ行く?」
「そうなんだよ」
 寝手場が訊くと、歯医者の息子が言葉に詰まった。
「パリのマドレーヌってとこで」
「お菓子か」
「いや、マドレーヌ墓地ってとこ」
「みょうがぼちか」
「お菓子から離れよう、寝手場さん」
「そことサンドニ大聖堂ってとこらしいんだけど」
「エールフランスで行くパリ七日間の旅か」
「いや、アタック25でもないんだ」
 歯医者の息子が暗い顔をする。
「彼女ね、マリー・アントワネットの生まれ変わりなんだって」
 ブリーダーの大久保女子が突飛なことをいう。
「異世界転生か」
「真剣なのよ」
「至ってまともな大人だと思ってたけどなあ」
「本当かもしれないじゃない」
 窓の向こうから教会の鐘の音が聴こえる。
 どこをどうするとそんな発想になるのか、寝手場には理解出来なかった。オカルトはツチノコしか信じていない。
「で、いつ辞めるんだ」
「明日らしいんだ」
「明日?」
 歯医者の息子が寂しそうにクラフトBOSSコーヒーを飲む。

 それから残った者だけで相談し、送別会の企画を急遽立てると、翌日を迎えた。
「すみません、急に辞めることになって」
 兼本さんが挨拶する。
 マリー・アントワネットの棺に会ってどうするのかさっぱりわからないが、本人にとっては大事なことなのだろう。
「それでは兼本さんを送る歌を皆で歌います」
 歯医者の息子がギターを持って告げる。
「曲はもちろん。マリー・アントワネット、なんて曲はないのでマリー・ゴールド」

   麦わらの帽子の君が
   揺れたマリーゴールドに似てる
   あれは空がまだ青い夏のこと
   懐かしいと笑えたあの日の恋

  「もう離れないで」と
   泣きそうな目で見つめる君を
   雲のような優しさでそっとぎゅっと
   抱きしめて 抱きしめて 離さない


 寝手場がカホンを叩きながら横にいる歯医者の息子を見ると、ギターを弾きながら泣いていた。
 なるほど、俺のボケに怒ってた訳じゃないんだ。
好きだったんだな。




   遥か遠い場所にいても
   繋がっていたいなあ
   2人の想いが
   同じでありますように 

1件のコメント

  • 歯医者の息子、切ないなぁ~。
    また会えるといいね。
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