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ミニ小説
「文芸部的な、余りに文芸部的な」
寝手場架莉
「年明け、受験なんスよ」
ここで一番若い青年が一筒を切りながら言う。
「それ、ドラだよ」
「うわー! やっちまった」
彼は必ず椅子が倒れるほど仰け反って絶望する。
「どこ受けるの」
寝手場は西を切りながら訊いた。
「サッカーサークルです」
「それは大学名じゃないでしょ」
医者の息子がツッコミながら九索を切る。
「あ、そっか」
「サッカー好きだもんね」
寝手場が珍しく優しいフォローをする
「はい! 美人女子大生との合コン楽しみです!」
サッカー関係ないじゃん、東家、南家、西家が同時に
心の中で突っ込む。
「合コンしたいんだ」
医者の息子がニヤニヤを堪えながら訊く。
「あ、はい! 美人な彼女見つけて在学中に結婚して、麻布十番に家を両親に建ててもらって、犬を飼います」
「ずいぶん明確な目標だねえ。幸せな子沢山な家庭を築きたいんだね」
「子供は要らないっス」
「そうなの?」
「邪魔っス」
邪魔とはひどいな。
「美人のCAの嫁さんだけでいいっス」
「あれ? いつの間にCAに?」
「女子大生と合コンじゃないの?」
「そうっス。結婚してからCAになってもらって養ってもらうっス。あ、女子アナでも可っス」
強気な若者である。
「いま捨てたのもドラだけど」
「あー! またやっちまった〜」
大丈夫か。
「ロン」
南家のスタッフ荒技さんが若者の捨て牌ドラで和了る。
「リーチ、一発、平和、タンヤオ、一盃口、ドラ3、16000」
「うわー! やっちまった! あ、明日からハワイ行くから早く帰るっス」
本当に受験するのか、若者よ。