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ミニ小説第七話

クリスマスには閉店間際、椅子を買って電車に持ち込み
白い目で見られたい、中の人です。
こんばんは。

随分間が空きましたが、もうすぐ午前一時に新連載が登場します。
作者渾身の内容ですので、連ドラ感覚で続きをお楽しみください。



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ミニ小説
「文芸部的な、余りに文芸部的な」
寝手場架莉


「まだ見ないでください」
 そう支配人のカラテ老人に言われ配られた札をアビイロード老人が
普通に見る。
「見ないでって言ったじゃないですか」
 その場の11名全員から責められるアビイロード老人。
「まだ見ないでください」
 もう一度そう言った途端、また見るアビイロード老人。
「見ないでって言ってるのに!」
 全く悪びれないアビイロード老人。
「まだ見ないでください」
 さすがに今度は見ないだろうと寝手場は監視する。
 やっぱり札を見るアビイ・・・
「まだ見ないでください」
 カラテ老人にも疲れが見える。
 4度目にして、ようやく札を見なかったので、
 神狼(じんろう)ゲームが始まった。

「札を見てください」
 カラテ老人の言葉で札をめくる寝手場。

 神狼 ———————

 プレイヤー12名中、神狼は二人しかいない。
 それを引き当てた。
 かき回すのが大好きな寝手場は、うっかり顔に出してしまった。
 隣の修理屋の親父が目ざとくそれを見る。
「あんた、神狼だな」
「今晩、焼き鳥の缶詰を開けるのが楽しみなだけだ」
 寝手場の寒い嘘はあっけなく見破られ、部屋の照明が落とされる。
「平和な村に夜が訪れました。皆さん、目を閉じてください」
 カラテ老人が恐怖の一夜の幕開けを告げる。
 寝手場は目を閉じ、下を向く。
 全員の呼吸、椅子の軋み、遠くの車の音が聴こえる。
「神狼は目を開けてください」
 支配人の呼びかけに、寝手場は誰にも悟られぬようゆっくりと顔を上げ、目を開ける。

 アビイロード老人が目をカッと見開いていた。



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