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今はもう聞こえない

 夏休み。
 惰眠と伸びたそうめん。
 既に終えた課題と埃を被った学習机。

 夏祭り。
 嫌いな人混み。
 汗とソースの匂い。

 花火でバカをする友達。
 安っぽい煙の中で弾む笑い声。
 不意に遭遇した気になる異性。
 見慣れぬ浴衣姿。跳ねる心臓。

 高揚する血液を悟られぬよう巫山戯た言葉を交わす。
 敢えて嘲り、茶化すような単語を選ぶ。

 それを遮るみたいに、わざとらしいお囃子の音がスピーカーを割って聴こえてきた。

 でも今はもう思い出せない。
 そう、今はもう―――、

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