『オットット症候群』?最近気になる「台詞」の使い方

いきなり何だよ!って思うけど、
近況ノートなら書いてもいいのかな?
本の蟲の独り言なので。

どーしても最近気になってしまってるのが
「台詞」の使い方。

読んでて辛くなってくる。
ずっとソレが続いて、断念してしまう小説も(汗)
どの作品って指摘するわけにはいかないので、
ちょっと私の仮想の例で書いてみます。

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設定:学園もの

主人公:本野ムシオ
ヒロイン:アリスティア
主人公の親友:マッドハッタン
ヒロインの敵:クインザハートス
ヒロインの友達:イナバラビット

背景:ティータイム中のムシオ達。
そこにイナバラビットを連れたクインザハートが現れ
言い争いを始めてしまう。
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静まり返った会場内。
アリスティアは不安げにムシオの表情をうかがう。

「待ってくれ、一体どういうことなのか詳しく教えてほしい。」
静けさを打ち破るようにマッドハッタンが声をあげる。

「どういうこともなにも。イナバラビットさんが証言しているわ」
すました顔で語るクインザハートス。

「アリスティアは関係ない!」
と、たまらずムシオがアリスティアをかばう。

「わ、私はあの時ずっと一人で図書室にいたのよ。
 イナバラビット、どうしてそんなことを・・・」
と、アリスティアは消え入りそうな声で呟く。

「ふふふ、仲間同士のかばい合いかしら?」と、クインザハートス。

「私はあの時アリスティアが教室にいたのを見たんです。」と、イナバラビット。

「それは見間違いだ!」と、ムシオがイナバラビットを強く睨む。

「そこにいたと言える証拠はあるのか?」と、マッドハッタン。

「証拠も何も証言こそが証拠ですよ」と、クインザハートス。

「私は見たんです」と、イナバラビットは固い表情で繰り返す。

「このことは理事会に報告させていただきます。」と、クインザハートスは優越感に浸りながらイナバラビットと去っていった。

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分かります?

登場人物が少ないうちは気にならないんですが、
複数の登場人物が発言すると、こうなってしまうんです。

「~~~~」と、イナバラビット
「~~~~」と、マッドハッタン
「~~~~」と、クインザハートス

『と、と、と、』
『オットット症候群』と名付けていいかな?(笑)

この単調な「台詞」の使い方が読み手からすると辛いです。
会話が目立ち、その場の状況が読み取れません。

話し方に特徴が少ない人物たちの会話の中で【違い】を表現するのは
難しいこととは思います。
ですが、そこは人物の感情描写や行動描写、または書き手の視点を加えるか、
その発言が誰のものか推定しやすくする工夫が必要かと思います。

以降、改善例。

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静まり返った会場内。
アリスティアは不安げにムシオの表情をうかがう。

「待ってくれ、一体どういうことなのか詳しく教えてほしい。」
静けさを打ち破るようにマッドハッタンが冷静に尋ねる。

「どういうこともなにも。イナバラビットさんが証言しているわ」
すました顔で語るクインザハートス。

「アリスティアは関係ない!」

バンとテーブルを叩き、ムシオがアリスティアをかばう。
そうだ、そんなことはありえない。
あの時、アリスティアは僕に頼まれて図書室にいたはずだ。

「わ、私はあの時ずっと一人で図書室にいたのよ。
 イナバラビット、どうしてそんなことを・・・」

信頼していた友人に裏切られたショックを隠せない。
金色の長い髪で表情を隠すようにうつむくアリスティアは
消え入りそうな声で呟く。

弱気になったアリスティアを見て
見た目と同様に、ますますクインザハートスの態度は大きくなる。

「ふふふ、仲間同士のかばい合いかしら?」

勝ち誇った笑顔が憎たらしい。
ムシオは言い返したいが言葉が見つからない。
思わずこの事態を招いたイナバラビットに視線を移す。

「私はあの時アリスティアが教室にいたのを見たんです。」

ムシオの視線に気付いたのか、
赤い目で見返し、固い表情で話すイナバラビット。

「それは見間違いだ!」

見た見てないの水掛け論に発展してしまいそうだが
本人がこう証言するのであれば、他に否定する要素がない。
ムシオがイナバラビットを強く睨む。

同じくイナバラビットをジッと見つめるマッドハッタン。
ただムシオと違いこちらは落ち着いている。

いるはずのない人間がそこにいたという彼女の発言の意図が分からない。
確認するように彼女に尋ねる。

「そこにいたと言える証拠はあるのか?」

「証拠も何も証言こそが証拠ですよ」

だが、イナバラビットの返答を待つ前に
ピシャリと会話を切り捨てるクインザハートス。

この言葉を受けてはここはもう諦めるしかない。
シンと静まる会場。そして一気に広がる気まずい空気。

「私は見たんです」

イナバラビットは固い表情で繰り返す。

突然、降って湧いたこの難題に、
苛立ちながらもムシオにはどうすることもできなかった。

「このことは理事会に報告させていただきます。」

これで最後だと言わんばかりに強気の発言。
クインザハートスは優越感に浸りながらイナバラビットと去っていった。

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創作表現については素人なのでご勘弁を(汗)

どうでしょう?
字数はどっと増えますが。

台詞というのは前後の文章により、かなり印象が変わると思います。

視点の切り替え、感情表現や行動表現を挿入。

そうすることで誰が発言しているのか特定しやすくなり、
そのキャラクターがもつ性格も出てくるし
それが育ってくれば物語にも厚みが増すと思うんですよね。

せっかくの良作品。
構成もよくテンポもよい。

面白いなぁ~と読んでいくうちに始まってしまう『オットット症候群』

中にはそれ以降ず~~~っと続く作品も。

残念でなりません(泣)


生意気だ!作家の苦労も知らないで。
たぶん、そうお叱りを受けることがあると思います。

でも。

イイ作品好きだなぁ~どんなエンディングが待ってるんだろう。

この気持ちを失いたくないんです。
ぜひぜひ作品の見直しのご参考に。

どうか皆様の愛情込めた作品が素敵な昇華を果たせますように。

心からお祈りいたします。

6件のコメント

  • こんばんは!
    面白そうな話なので参加にきました。
    言う通りで多人数の会話劇は難しいんですよね。独特の喋り方で誰が喋ってるか分かるようにする、なんて手もありますけど現実離れする傾向があったりして。
    私も大事なのはリズムだと思います。それとセリフの合間にはなるべく行動を起こせるようにしてたりします。突っ立って喋ってる、がないようにしたいと思ってますね。
    あとは何と言っても喋っている人数を絞ることですね。あくまで二人の会話をメインにして複数を参加させる感じですかね。
    映像として思い浮かべた時に成立するかどうか、を気にしますね!
  • @関川 二尋 様

    こんにちは!
    コメントありがとうございます。
    何より作家様からのコメントいただけることに
    とても恐縮しております(汗)

    そうなんです!

    会話のテンポがその作品の良し悪しをきめる
    といっても過言ではないような気がします。

    会話だけでボーっとキャラが立ってるだけというイメージにせず
    できれば会話の前後にテンポの良い動きを入れていただければ
    かなりアクティブな作品に仕上がるのではないかと思ってます。

    ちなみに関川様の「ナイショ話」はとても勉強になりますね!
    私は読み手専門ですが、私の視点からもナルホド~と
    作品を深く読み解くヒントがいろいろとありました。
    じっくり読ませていただきたいと思います^^

  • wishさま

    はじめまして。

    wishさまからフォローを頂いたようですが、お名前に見覚えがなかったので確認させて頂いたところ、いつの間にか私の方からフォローさせて頂いたことになっていたようで、大変驚きました。

    いわゆる「読み専」と呼ばれる方々をフォローさせて頂く場合、私の作品にフォローまたはレビューをつけて頂いた場合のみと決めております。ですから、今回のことは私自身も腑に落ちず、首を傾げるばかりです。


    wishさまの優しいお心遣いでフォローバック頂いたかとは存じますが、特に私の作品に興味をお持ちでない方にフォローして頂くのは心苦しばかりです。失礼かとは存じますが、私からのwishさまのフォローは外させて頂きましたので、wishさまもお気を使われず、私のフォローを外して頂ければと思い、コメントさせて頂きました。


    日本はこれから寒さが厳しさを増す時節、どうぞご自愛下さいませ。
  • @由海様

    はじめまして。
    コメントありがとうございます^^

    私は今朝、フォローいただいた方がおりまして
    読み専ではありますが放置は心苦しく、SNSのような相互フォローの感覚で
    いままでフォローしていなかった方々へ
    フォローバックさせていただいた次第でした。

    何かのきっかけで行き違いがあったのかもしれませんね。
    こちらも考えなくフォローバックしてしまい、申し訳ありません。

    さて、従来のSNSのように交流(興味)がなければ
    私もフォローを外すとべきかなと考えました。

    ただ、ここは私の大好きな読書、
    本(作者様)との御縁を手繰る場だと考えています。

    縁は異なもの味なものです。
    せっかくコメントをいただきました。
    これも良き縁と考え、由海様の作品の方を拝読させていただければと思います。
    (具体的に言えば「行く末は空もひとつの 〜関西人のアメリカ暮らし〜」がすごく惹かれてます 笑)

    厚かましいお願いとなりますが
    こちらのフォローの方は継続させてください。

    また、由海様からのフォローは必要ありません。
    私自身、そもそも読専なので
    一方的にこちらから気に入った作者様をフォローさせていただくスタイルでした。

    どうぞよろしくお願いいたします。

    日本では大寒を迎え益々寒さが厳しくなってきました。
    アメリカの方も寒さは厳しいでしょうか?
    どうぞお体を大切になさって下さい。
  • wishさま、

    このたびは「行く末は空もひとつの」に素敵なレビュー&お星さまを頂き、ありがとうございます。

    「そうか、私は、たま~に頼りになる相方とツッコミを武器に戦う、異世界転移ファンタジーのヒロインやったのね~」と予想外のご意見を頂き、そういう風に見て頂きながらお読み頂くのもありだなあ、と感心しました。

    思えば、ひょんなことからwishさまとお知り合いになり、こうして温かな応援を頂けるのも何かの縁だと思っています。これからも様々な角度からアメリカを見つめ、楽しんで頂けるエッセイを書いて行きたいと思います。



    バージニア州の気候は変わりやすいことでしられていますが、ここ最近は特に変です……先週のはじめに洗濯機の排水管が凍結するほどの寒波に見舞われ、今週初めからは予想外の温かさで連日20℃越え。今日は25℃まで上がりました。が、夜は一気に下がって10℃以下。で、今週末からまた寒波が来るようです。もう身体がおかしくなりそうです(涙)こんな時でも、アメリカ人は半袖Tシャツで歩き回ってます。ビーチサンダルというツワモノもいます。本当にツッコミどころが満載なのです。

    日本は一番寒い時期ではないでしょうか? どうぞご自愛下さいね。
  • 由海様

    ご丁寧にレビューのお礼をいただきありがとうございます。

    アメリカという国に私はトレッキングで、
    息子はNBAで魅了されてるものですから
    ホント楽しく拝見させていただきました。

    人によって感じ方とは異なるもので
    だからこそ、より面白いのかなと^^
    僭越ながら本の蟲として、異世界風にレビューしてみました。
    これからも更新楽しみにしています!

    気温差10度以上なんて私のところでは想像できないです。
    地球規模での異常気象の一環なのでしょうか?
    思えば、北国であるこちらも近年では1月に雨が降るという
    異常気象を観測していますから、やはり何かおかしいですよね。

    そんな環境でも半袖シャツとビーチサンダルなんて!
    やはりそこはきっと異世界なんだと思います(笑)

    寒暖差激しいと体調管理もままならないと思いますが
    どうぞお体ご自愛下さい。
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