主人公の松ヶ崎弘君。かなり書くのが難しくて個人的に嫌いです。
彼は言ってしまえば「変わり者、オタク、普通の枠組みにとらわれない連中」の巣窟である高専で、変わり者になりきれないつまんねー男を自覚している根暗野郎です。
ですが、異常者の集団の中で、世間一般的な普通の男、彼の自覚では「つまんねー男」で居続けるというのは十分に変人である要素になりえます。
風花や綾、弓道部組など、よく人を見ている連中はそれに気づいているので、面白がって彼に近づいています。本人が自覚しておらず、不器用に自分の個性を手探りしているのを見て楽しんでいる性格の悪い連中でもありますが。
そのうえ、彼にはもう一つの異常性を持ってもらいました。物語が進行するにつれてどんどんと明らかになり、最終章で風花が彼の異常性について言語化してくれました。
「異常なまでの責任感」がそれで、彼は彼を縛り付ける「夢」だとか「やりたいこと」に囚われまくった結果、それらに付随する問題なり責任なりを放っておけなくなりました。
自身の本来のキャパシティや責任の所在を超えた領域までも自分のこととして背負い込む、彼の異常性は、異常者集団である高専の、さらに精鋭異常者集団であるレストア部の中でも極めて異常といえます。
変わり者になれない彼の側面と、変わり者たちのために究極の自己犠牲を行える超異常者の側面を描くことが難しく、ここで解説させてもらいました。