おはようございます。
あ…………上がっとる。…………レビューの力?? なんか、もう、思い残すことはありません……(ダイイングメッセージ)。ありがとう……ございます(行き倒れ)。
『制服デート』
https://kakuyomu.jp/works/16818093089757579868/episodes/16818093089757686348 ちょっと、あの、うれしいという気持ちを還元したいなと思って。完結作品に蛇足かとは思うので、少しだけ。よかったら、どうぞでございます……
【春の記憶】
「はい、七沢さん」
前の席から配られたプリント。春の遠足のお知らせ。行き先は、日帰りで行く東京ディズニーランド。千葉市民には近場のスポットだ。
「それでは、春の遠足で行動する班分けを決めます」
先生が言った。教室は一瞬、静かに騒然となった。皆、友だちと同じ班になりたいのだ。
「はい、静かにしてください」
とりあえず、いつものディベート班に分かれて、そこから微調整していきましょう。と先生は続けた。
私の前の席は、林くん。
私が高校に入学して、初めて喋った人。友だち…………てゆーか、クラスメイト。
「凛! 同じ班で良かったねーー」
「うん! ランドって行くの、久しぶり。私、シーは行ったことないんだよね」
ずっと美浜区に住んでいるけど、小さい頃ランドの方へ家族と行ったきりだ。
「私初めてだよ? ランドもシーも」
「え〜〜、じゃ、どこ行ってみたいー?」
「鹿瀬さん、初めて? 俺のオススメはね〜」
「マップ見て! どこから回りたいとか、ある?」
班が固定されて、教室は今度こそ騒然となった。
…………林くん。席は私と、前の席次の席だけど、班は別々になっちゃったな…………
別にね。いいんだ。普通に話すし。同じクラスで、席が近い…………てだけで奇跡みたいなんだから。
四月。
高校生活、第一日目。初日! 私は緊張していて、ばかみたいに早く登校して、七時台の教室に居た。もちろん、誰も居ない。
と思ったら、居た! 窓辺に、私より早い人。カーテン越しにドキリとした。……誰なの? 私みたいに緊張し過ぎて、勢い余ってエクストリーム登校しちゃった感じ?
「! ……おはようございます」
気付かれた!
「おはっ……ようございます」
男子だ…………えぇ、気まずい。女子でも気まずいのに。人見知りを発揮してどうする。なんか話してみよう。なんか!
「あっ」
「あのさ」
かぶった! お互い、何か話そうとした感じ。うわーー……
「えへへ……」
「はは……」
私もその子も耐えきれなくなって、笑ってしまった。…………第一印象っ、かっこつかん!
「おはよう、私、七沢凛だよ」
「おはよう、僕は、林蓮」
おもきし笑ったから、普通に喋れそう。
「林くん、早いね。私、緊張して、めっちゃ早いけど、一番乗りしたら落ち着くかなって」
「僕も。まさか二番乗りがこんな早いとは思わなかった」
窓の外、グラウンドではトラックを走っている生徒が居る。
「部活の、朝練かな?」
「さっきから周回しているよ」
「陸上部、かなぁ」
「運動系、だろうねぇ」
運動音痴……てほどじゃないけど、私は足が遅い。
「私、あんなに速く走れないよ」
「僕は、速くはないけど」
「けど?」
「持久走みたいの、あんまり疲れない」
「えぇ、すごーーい」
「見て、あの人ずっと早いまま走ってる」
私が見たのは林くん。私と同じ新しい制服。私より目線が上の、背が高い男の子。…………なんだか急に、隣に立っているのを意識してしまう。
「七沢さん」
「はい!」
吃驚したーー。見てたの、バレてないよね?
「部活、決めてる?」
「部活…………文化系、かなーー」
「だよね~〜」
う…………。なんだなんだ、その『にこっ』は!
「何部に入ろーかなーー」
えぇ、笑っ…………え、あの、えーー……
「わ、私は天体観測が出来るところならって」
「わぁ……午前二時に?」
弊害だ。あのロマンチックな歌がすぐに思い浮かんでしまう。
「♪見えないモノを見ようとして?」
「あはは……見える見える。ちゃんと見える星を観に行くんだよ」
「出来るとこ、あるといいね」
「うん」
それから、次々新入生が登校してきて、教室は新一年生でいっぱいになった。
春の遠足。
私の班には、友だちも居て、ディベートの授業で沢山話したクラスメイトも居て…………林くんは居なくて、でも、楽しかったの。
東京ディズニーランドに着いて入場してからは、班行動。時々、待機列で近くになったり、すれ違ったり、同じ制服のクラスメイトはすぐに見つけられる。
「凛、楽しいね!」
「うん!」
そう、ほんとに楽しい。楽しいよ。
「七沢さん、行くよ! こっちこっち」
ほんとに…………ほんとは…………
やめよ。今はちゃんと今を楽しもう!
「はーい!」
私、京葉線で、ランドにすぐのとこ、住んでいるんだよ? これからいくらでも、行こうと思えば行けるじゃん。……行ける……よ、ね?
【終】