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関心領域

 毎月一日は、映画の日。
 『関心領域』を観てきました。


 Xでボソボソ連投した感想を、近況ノートにも。(※内容ネタバレあり)








 アウシュビッツ収容所所長が話していた、荷(ユダヤ人)を鉄道で運び入れて焼却炉で灰にする、効率の為に焼却炉は円環状で、第一焼却炉で三千人近くを高温焼却して、第二焼却炉で次を焼却している間に第一が冷える……なんていう恐ろしい内容を淡々と口にしているの。


 『関心領域』は全年齢向け公開されているけど、アウシュビッツ収容所について授業で習った人なら、ヘス家の壁の向こう側で何が行われているか、想像することは容易。
 日本人の庶民には信じ難いほど広大な庭には、綺麗な芝生と花と菜園、プールや温室もあって、家はお屋敷。


 でも、そこに住んでいる所長の家族は、パッと見お金持ちの一家……だけど、視界には常に隣の暗黒みたいな収容所がある……それらは関心外のよう。叫び声や不穏な音が響いているのに。奥さんは接収品らしき服飾品を、日常シーンの一環で、選び取り身に付けている。


 所長家族の日常の同じシーン中に、(壁の向こう側の)虐殺の光景が直接描写でなく音響や背景としてちゃんとあるのが、物凄くおぞましいものを見ている気持ちになった。


 所長がパパとして奥さんと子どもたちを連れて川遊びをしていた時、川床で人骨らしき燃え残りを拾って察した所長が、慌てて帰途につき子どもたちを風呂で洗わせるシーン……優生思想的に(所長視線だと)穢れたとでも感じたのか、さすがに観ていて、胸糞悪い気持ちになってきた。


 映画館のスクリーン越しに、遠い国と時間の家族なので、なかなか監督が意図する『家族に自分を重ねて見てほしい』は難しかったけど、あの時代あの場所で、もし自分が奥さんだったら……(ユダヤ人の)誰かの毛皮のコートや口紅、自分の物にしちゃってたのかなぁ……なんて。


 あの立場で、抗う気持ちや正義とは何ぞやなんて…………やっぱ思えないんだろうなーー……


 でも、隣から絶えずワーキャー(絶命の叫びなど)聞こえてくるお屋敷は、嫌過ぎる。




 奥さんは、夫に転属でここ(アウシュビッツ収容所の隣)からは離れることになると告げられても、ここは十七才の頃から夢見てきた理想の暮らしの家だから離れたくない、あなた独りで転勤して、私と子どもたちは残れるよう取り計らって……と。いやいや、いやね、素敵なお屋敷ですよ。でもね…………マジかよ、て本気で思いました。
 そこはさぁ、所長まで務めた旦那さんでしょ? 転属と言っても栄転だし、本当にそこに居たいの?? と。良い暮らしなら、何もアウシュビッツ収容所の隣じゃなくてもよかろうって……背筋が冷たくなりました。


 造り的にはドキュメンタリー調に感じるカメラワークで、異常に研ぎ澄まされた音響が、間接的な残酷描写を担っているようでした。
 映画館で観るべき作品だな、と……A24かぁ…………てね。思いました。

10件のコメント

  •  ふむふむ、ルドルフ・フランツ・フェルディナント・ヘスの事ですな。
     
     ナチス副総統と同名ゆえ、ちょっとややこしいのはともかく、やはり後に極刑に処されたオットー・アドルフ・アイヒマンその他と同様、彼もまた、ただ思考もなく命令に盲従するばかりだったのかな、と。
     
     かつてのハンナ・アーレントの『悪の凡庸さ』という言葉は賛否両論を生みましたが、それを私は、彼らを表すに的確な表現だと思います。
  •  平和ボケならまだしも、悪に麻痺していく、その行き着く先が日常に同化してしまうのが(意識や認識を自己防衛の為にボーダーを設けるとしても)何とも不気味でした。

     ところで、垣間見えるインテリナナミンおねえさまは良いものですね。
  •  そんな、インテリアだなんて、家ですか〜…なんて冗談はさておき、実は得意ジャンルでして…
     
     かつてミリオタ時代、たまたま図書館でナチス・ドイツの犯罪行為を記した本を読んで以来、徐々に力点を移動。いまでは、その関連の文章を読むのがひとつの趣味となっているんです。

     それにしても、私も観たいな〜、その映画。
     ちなみに『ヒトラー最期の12日間』もオススメです〜。
  •  よし、趣きあるナナミンさまは玄関にでも飾っておきますか! 『インテリア・ナナミン』

     ナチス・ドイツは、浦沢直樹『MONSTER』が好きで、アニメ放送してた頃私も図書館へちょこちょこ読みに行ったくらいのニワカです。只、拷問描写とか出てくると、怖くて読めなくて、飛ばしたりしてましたねw

     オススメ、ありがとうございます✨ 『関心領域』は、エンタメというよりはアート寄りなのかなと思います。(人によっては退屈)

     今日『オッペンハイマー』もハシゴしようか迷って、一本だけにしたんですよ。
  • テレビの映画紹介コーナーで気になっていた作品!
    いったいどんな日常になるのか、想像できない。
    ちょっと見てみたくなりました^^
  •  こんばんわ、文月さま。

     私は好きな部類でしたが、オススメは……していいのか正直わからない作品なので……Xの公式垢が動画付きのポストをしているので、気になったら覗いて見てください。

    https://x.com/ZOI_movie/status/1796695173298294909?t=Kpn8ZOrDz96sChbD6V0HsQ&s=19

     映像美とほとんどホラーな音響は素晴らしかったので、その点はオススメ出来ます。
  • 毎月一日は映画の日って、すごくいい習慣ですね!
    『関心領域』、気になりつつも、何が起きるか想像がつくだけに、なかなか観る気が起きない映画です。しかし、観ておくべきだろうなあ~と思います。
    映画の音響だとたぶん怖いので、私は家で観ますね(>_<)

    ナチス関連の映画は結構見ましたが、『ライフ・イズ・ビューティフル』が一番心に残っています。あとは定番だけど『シンドラーのリスト』の、コートだけ赤いところ。
    映像でしかできない表現だなあと思います。
  •  おはようございます、鐘古さま。

     習慣にしたいところですが……毎月一日は、全国的に『映画の日』や『ファーストデイ』と言いまして、映画館の料金がお安くなっている日なのですよ。

     映画館自体は、それぞれレディースデイや毎週〇曜日など、料金が日によって割引されている日が結構あるので、ありがたいサービスデイです。

     『ライフ・イズ・ビューティフル』……!
     あの作品は、お父さんが優しくて泣きますね。家族への愛情が、自身の人間性を高める様は美しいものです。
     映像でしかできない表現は、醍醐味ですよね。『関心領域』にも作中、飢えたユダヤ人の為に、林檎を拾い集めて隠しておく少女が、サーモグラフィカメラで撮ったシーンがあって、その少女がサーモで白く見えて、神々しい演出に見えました。

     ナチス関連映画はどれも、なんとなく観る側も襟を正す気持ちになってしまいます。
     ナチス・ドイツが人間を人種で選別することをしましたが……人間が多様性を認識することを社会的に学ぶまでに、随分時間がかかってしまいましたね……(朝礼の校長先生?)
  • 連休様

    ほっこりほのぼのの「ヒルコ班長」を読んだ直後だけに……💦
    この映画の胸糞悪さがハンパないです~(;´∀`)
    ヘスの奥さん、その後も幸せに暮らしましたとさ、だったらイヤだなと思ってしまいます。
    『関心領域』……観てみたいような観たくないような。ヘタレな自分は、たぶん最後まで観られない気がします。
  •  (夕方の挨拶って迷う)ごきげんよう、ブロさま。『ヒルコ班長』読んでいただいて、ありがとうございます🤍

     映画の映像自体は、むしろ美しく、もし第二次大戦やナチス・ドイツについて全く何も知らなかったら、ちょっと音楽と台詞の端々が『おやおや?』って不穏な印象……というだけで、昔の上流階級一家を追った映画かな? って観ることも出来なくはないです。

     気になりましたら、公式がXで動画ポストしていますので、覗いて見てくださいな。(私、映画の宣伝マン?)

    https://x.com/ZOI_movie/status/1796695173298294909?t=Kpn8ZOrDz96sChbD6V0HsQ&s=1
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