異世界と日本との差異は色々と大きいが、その中でも食に違いは大きい。
渡に購入された二人の奴隷、マリエルとエアは、日本での食事を非常に楽しんでいた。
美味しいから自然と食が進む。
おまけに室内での活動が多くなり、ゲームや動画視聴といった動かずに過ごせる娯楽も多い。
自然と運動強度は下る日々を過ごしていた。
カロリー摂取量は増えているのに消費量が減る一方。
そんな日が続けば、どうなるか。
マリエルとエアが脱衣所に置かれていた体重計に乗って、鬼気迫る声を上げた。
「う゛ぞ……ッ!?」
「うっ……これは大変です……」
急な大声に慌てて駆け寄った渡だったが、何が起きているのかを理解してホッと胸を撫で下ろした。
二人が体重計に乗って顔を青くしている。
これほどショックを受けた顔を見るのは初めてだが、命にかかわる一大事ではなさそうだ。
「ふ、服のせいだよ……」
「そ、そうですよね」
「一体どれだけ重い服を着てるんだ。それにちょっとぐらい肉付きが良いぐらいのほうが魅力的だぞ」
ガクブルと震える二人につい口を挟んだが、二人がキッと渡を睨みつけた。
その眼力の強さに思わず引いてしまう。
「ご主人様にとっては肉付きの良い女性は好ましいのかもしれませんが、私たち女性からすると余計な脂肪がつくのはあまり好ましくありません」
「そうだそうだ!」
「う、迂闊なことを言って悪かった」
マリエルとエアの剣幕に、主人という役割も忘れてすぐさま謝罪に追い込まれる。
まあ相手の気持ちを考えない失言だったのは間違いない。
二人が服を脱いで下着姿になって、恐る恐る体重計に乗っていく姿は滑稽であったが、同時にとても真剣だった。
たしかによくよく見れば、お腹周りが少しだけついてる気がしないでもない。
だがたぷんたぷんの巨乳やむっちりとしたお尻といった、男にとっては目の惹かれるところはますますボリュームが増し、魅力的なスタイルになっていた。
「でもどうやって痩せるんだ? 食べるのをガマンするか?」
「うう……それはキツイよぉ……」
「私もこちらの食事の誘惑を跳ねのけられる気がしません」
「となると運動する必要があるな。エアはまあ鍛錬すればいいんだが、こっちで大々的に動かれるのも困るんだよなあ」
エアが全力を出すとトップアスリートが翳むような活躍を見せることになる。
余計な注目を集めることになるのは間違いなかった。
かといってジムにいけばナンパが心配だ。
「あ! アタシいいこと思いついた!」
「なんだ? なにかいい方法があるのか?」
「エッチすればいいじゃん! あれ沢山汗かくし、気持ちいいし、一石二鳥じゃない!?」
「まあ結構な運動になるとは聞いたことがあるけど」
「……私、痩せるためです。やります!」
マリエルが覚悟を決めた表情で、いきなり部屋から媚薬を持ってきて、グビっと飲み干した。
エアも負けじと続けて飲みだす。
「おいおい、俺も嬉しいけどさ、色気もくそもないな」
「そんなこと言わないでさ、ね、しよ?」
「そうですよ。ご主人様は動かなくて大丈夫ですよ。私たちがたっぷりと動いてさしあげますから」
ふぅふぅと荒い呼吸を続け、全身にしっとりと汗をかき始め、紅潮した表情を浮かべる二人を前に、渡も覚悟を決めた。
精力剤を飲んで、とことんまで付き合ってやろう。
それからしばらく、渡の家から嬌声が絶えることはなかった。
後日、再び体重計を前にしたマリエルとエアは、不満そうな表情を浮かべていた。
「私たちも痩せましたけど、なんでご主人様が一番痩せてるんですか!?」
「主ばっかりズルい!」
「いや、仕方ないだろうが。俺は二人分動いてるんだぞ……」
別に体重に困っていなかった渡が一番減量に成功していた。
げっそりとやつれた顔で、渡は溜息を吐いた。
精力剤の在庫を補充しておかないと……。