これを読んでいる人は、案外NHKドラマ「路~台湾エクスプレス~」も見ているんではないかなと思うのですが、ドラマ内ではまだ工事中だった中だった一〇一(たぶん第三話の頭辺りで完成するんじゃないかなと)は、示見の眼の世界では既に完成しています。

 正式名称は、台北一〇一。台北の、というか台湾最大のランドマークの一つがようやく登場。地上百一階建て(地下は五階)の台湾最高峰のビルで、オープンした二〇〇四年十二月三十一日からしばらくの間は屋上の高さを基準にした場合、世界最高峰のビルでしたが二〇一〇年にドバイのブルジュ・ハリファに抜かれました。なお最長部という意味ではシカゴのウィリスタワー(当時はシアーズタワー)の方がちょい高かった。ついでにその後、主に中国にばんばん高いのが建ったため、現在では世界十二位。
 なお、二〇一三年にMRTの信義線が開通するまでは、最寄り駅は北側に一キロ以上離れた市政府駅しかなかったので、そこから無料のシャトルバスに乗るか、離れた場所からならタクシーかバスでの移動という、ちょっと不便な観光スポットでした(上のオフィスフロアで働いてた人はもっと不便だったはず)。
 形のモチーフは竹。
 展望台のある八十九階まで三十九秒で到達するエレベーターは東芝製。このため以前は東芝エレベータ株式会社最寄りの川崎駅の大型モニターでこのエレベーターを紹介するCMが流れていて、台湾マニアにとっては見かける度にちょっと幸せな気分になれるスポットだった。
 低層階はショッピングモールで、ビルをモチーフにしたお土産なども購入可能。日本食の材料が買えるちょっと高めの食品店なども入っています。ただし、エスカレータの造りや、外壁に面した窓が足元までガラス張りだったりと、高所恐怖症の人間には相当に厳しいデザインのショッピングモール。
 大晦日の年越しカウントダウンから始まる新年の打ち上げ花火はビルオープン時からの名物。日本と違って台湾でのお正月メインは旧正月にあたる『春節』であり、歳末大売り出しや連休、新作映画の封切りなどはみんな春節の時期に行われるのですが、このカウントダウン花火だけは例外的存在で、大いに盛り上がります。
 『爆撃』『炎上』と親しまれているこの花火も、数年前からは地球温暖化を意識して、LEDライトやプロジェクションマッピングを組み合わせ、花火の数を削減中。このため、いかにプロジェクションマッピングの側に陣取るかが場所取りの課題になっています。
 なお、一〇一ビルの隣には貿易センター(毎年夏の漫画博覧会会場。ゲーム博覧会と合わせて盛り上がる台北の夏のオタクの祭典、ただし今年はコロナで中止)があり、北側の市政府駅(市政府は市役所のこと)まではデパートやシネコンが建ち並ぶ一大商業圏。
 もともとは西側を流れる淡水河沿いに誕生した舟運の街だった台北が、高度経済成長を背景としてそれまで手付かずだった東側に拡がっていった、割と無秩序にできていた郊外の廉価な住宅地を再開発してできた、日本でいうと新宿副都心やお台場、みなとみらいなどに当たるようなこの地域。ただし、埋立地ではないため、一本裏道に入るとまだビルも少なく、団地や粗末な一戸建てが残っていたりします。戦後に台湾に移り住んだ外省人と呼ばれる人々、その中でも下級の兵隊だった人々が空いている土地を勝手に切り開いて作った『眷村』と呼ばれる住宅地は、その一部が『四四眷村』という名で保存され、木造モルタル仕上げの低層住宅(今はカラフルに着色済み)越しに一〇一ビルを見上げられる面白い場所として観光スポットになっています。