ようやく宿題を終えた気がする。中世の寺院で棲息していた稚児に関して、今東光の『稚児』を読んだあと、自分的にまとめたくなった。だが、比叡山などにある蔵書など読めるわけがない。そこで学者の辻晶子さんの論文2つを熟読して分かった気になった。要は稚児に関しては次の点が要諦なのだ。
1)稚児は中世の文学、絵巻物などに登場する。しかしその身分、生涯についてはなんの情報もない。
2)実際に稚児が生活していた寺院に残された文書は、今東光が『稚児』に引用した「弘児聖教秘伝私」と「稚児灌頂XX」。稚児の位を授ける儀式「稚児灌頂」の儀軌が後者にかかれているがただの儀式のプロセスだ。「秘伝私」はどうも後世に男色坊主が書き加えたものらしい。ということで結論はやはり「謎」なのだが、この文書で位の高い稚児がいたということと、各地の寺社仏閣に残っている「稚児行列」などの習わしをよく分析することで、ある程度その生活が想像できる。