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The Birthday

ミッシェルガンエレファントをモデルに刑事ドラマを書きたい──
今年の夏に思い立ってから、黄猿探偵シリーズにはミッシェル刑事がレギュラー出演しています。
Twitterでの“昭和の人気刑事ドラマ「太陽にほえろ」に出演するなら刑事のニックネームは?”という大喜利から始まった妄想の成れの果て。
そこから更に派生して、好きなアーティストを次々と巻き込み、名前や性別などを変え、特色だけ残してキャラとして成長させてきました。
モデルとなったアーティストのファンの読者様には不快な思いをさせているかもしれないというリスクも抱えながら、私なりに渾身の愛とリスペクトを込めています。

そんな架空キャラの中でもモデルに最も遠く、オリジナル色が強いのが「千葉友子」なのですが、最初は本当に名前の字面だけ借りてキャラは寄せないつもりでした。
チバユウスケさんがいつの時代も遠く尊く捉えどころの難しい人だからです。母性本能をくすぐる可愛らしさを多く持つ人でありながら距離が縮まることのないカリスマ性と、いわゆる変わらない為に変わる変化。
とても素人作家が描けるようなものではない複雑な魅力に手を加えることはできないと思いました。ところが女性キャラとして登場してから、友子ちゃんがチバとして主張してくる時があって、やっぱりモデルは生きていると感じるので、ミッシェル、バンクロ、ROSSO、The Birthdayの歌をほぼ毎回どこかで歌ってもらいました。
カラオケで歌ってみるとわかりますが、チバさんの歌はキーが高めでそのまま女声で歌えるのです。歌詞は完全に男言葉ですが…

そして、長らく録音された音源を聴くばかりだった作者も、やっとThe Birthdayのライヴに行く機会に恵まれました。
大きめの会場も久しぶりの体験で、美しい照明の演出や広いホール独特の音の響きも新鮮でした。基本的に小さいハコが好きですが、たまにはプロらしい大規模なのもいいなあと。
大好きなアルバムNOMADの曲と合間に厳選された昔の曲、それらがまた素晴らしくて、本当に好きな曲ばかりで。「俺の友達」という歌詞が入った曲を複数聴けるとは思ってなかったので泣きそうな思いで聴き入ったり、思いきり踊ったり、ダブルアンコールまで文字通りあっという間に過ぎた素敵な時間でした。

チバさん、MCは少なかったですが、何度もありがとうと言って最後のほうはニコニコしていてバンド自身が本当にライヴを楽しんでいるのが伝わってきました。
若い頃の尖ったガレージロックのイメージと比較して、丸くなったとか老けたとか嘆くファンもいますが(気持ちはわからなくはない)、でもワンマンのライヴを体験してからその意味を判断してほしいと思いました。衰退ではなくて進化です、どう見ても。
私も、生の歌声を聴くまでは希望的観測のような物言いしかできてなかったけれど、この目で見て実際に耳で聴いてよくわかったから。

チバさんの歌い方は優しく、真っ直ぐな印象。
よく声量が大きく強い声を「がなり声」と表現されますが、とても違和感があって。
喘息持ちのチバさんは歌う為の発声をきちんとやっていると思うし、細い身体の腹の底から鳴る声は、おそらくずば抜けて優秀な声帯を通って世界へ響く。
肺活量が人並みより弱くても声帯が良ければ、とんでもない音で歌うことはできます。
比較するのはおかしいですが、呼吸器疾患があり声帯も弱い私は少ししか歌えません。歌は大好きなのに。

それはさておき、その日に聴いた昔の曲はとても優しい歌い方でした。そういう選曲だったこともありますが、正直ちょっと驚くくらいに。
きっと今のチバさんの気分なのでしょう。
チューニングの時に男性客がユウスケ!と叫ぶと後ろ向きのまま小さく手を挙げてそっと応えていたり、アンコールで全員お揃いのTシャツ(メンバーデザインの新作)を着ていたり。
優しさというものは強さと余裕から生まれるものです。
それに、チバさんは元々真面目で優しい人なのです。
人として何も変わってない。少しコミュニケーションが豊かになって、素直に自分の本質を出せるようになったということだと思います。
パンクを愛する人は大抵優しい。そこへ不器用さが邪魔をして生きづらくさせるのです。
インディーズ時代の話で、バンドをやっているなんて彼女にはかっこ悪くて言えないから隠していたとか。そういう防御のような態度がなくなって、自分をさらけ出すことも表現に取り入れるほどの余裕を手に入れたんだなあと。

まだ感動が渦巻いていて、話がうまくまとまらないです。
泣きそうになった曲というのは、歌詞の中にアベさんと思われる人物が登場するいくつかの曲です。ミッシェル時代の思い出と言ってもいい情景が浮かんでくる曲もあります。
新しい方向性を生み出したとも言えるNOMADの中に散りばめるようにして過去を愛おしむ曲を入れてくるところに、愛の深さを感じるのです。

歌のことばかり語っていますが、安心という言葉を音にしたようなクハラさんのドラム。小さなセットのどこからそんな音が出てくるのかという突き抜けるような明るく気持ちの良い音を聴いていると、心が安定します。
本当に凄いドラマーのプレイを見ているとまったく真似したいとは思わないですね。ただずっと聴いていたい。
フジケンさんとハルキさんは登場の瞬間からキレっキレな感じで演奏は激しく、芸術的でした。凝ったアレンジはアドリブなのか、チバさんと緻密に打ち合わせて仕上げたものなのか。
ステージ以外の時の緩さとのギャップが堪りません。

The Birthdayは完全に後追いなのですが、本質に触れたような気がした初ライヴでした。チケットを譲って下さった方には本当に感謝しています。
複雑な思いで迎えた43回目の誕生日直後、忘れられない体験から幕開けた新しい日々は、きっと楽しい。
ありがとうThe Birthday──

音楽が好きでよかったと、また改めて思った夜でした。
気がつけば長文。最後までお付き合いくださり、ありがとうございました♡

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