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王子考

口内炎に端を発して皮膚科に行ったとき、親指と小指の爪の変形も診てもらった。

どうやら靴が合っていないらしい。かかとは高いが、幅の広い靴で少しでも足を楽にと思っていたが、かえって、そのせいで、靴の中で足が前に滑り、つま先によけいな負担がかかっていたようだ。
で、靴を買い換え、靴紐もゴムのものに換え、少しでも、足への負担を減らそうと取り組んでいる最中だ。
靴選びは難しい。

ところで、合わない靴で足が痛むとき、私の頭に浮かぶのは、人魚姫のことだ。
彼女は、美しい尾ひれと引き換えに人間の足を手に入れた。だが、歩くたびに血が滲むほど痛い思いをしていたと本には書いてあった。足は痛いわ、喋られへんわ、肝心の王子は、ぼんくらで、助けてくれた相手をカン違いしたままやわ、ほんまに……ろくでもない状態だ。

それにしても、おとぎ話の王子たちは、そろいもそろってぼんくら揃いだ。白雪姫もシンデレラも眠れる森の美女も。王子たちは、ただのメン食いのぼんくらだ。でも、彼らは、それなりにハッピーエンドに向けてがんばるので、まあまあよしとしよう。

ぼんくら揃いの王子たちの中でも、人魚姫の王子が一番難儀なヤツだ。子どもの頃、人魚姫を読みながら、(こら、その女ちゃう、ちゃうってば。あ~あ~間違えると思ったら案の定間違えた~)と、幼心にもいらだたしくもどかしく思ったものだった。それでも、あの頃は、ひたすらに王子を想う人魚姫に心ゆさぶられ、彼女の行く末を涙とともに読んだのだが。
今となってみれば、王子のぼんくらさと身勝手さに、ロマンチックは消し飛んでしまう。
……ほんまに、王子ってば。あかんやん。

そういえば、光源氏はじめ平安時代の貴公子たちも、会いもしてないのに恋を語る、メン食いよりも困ったヤツらではないか。でも、顔よりも返歌とかで教養面をちゃんと評価してる気もするので、そこはまだマシなのか?う~ん。

そこまで考えて、そういえば、と他の王子のことも考えた。
手塚治虫の『リボンの騎士』。フランツ王子はどうだろう。彼の真っ直ぐな感じが好きだった気がする。そういえば、遠い記憶だが、王子姿のサファイアを本人とは知らず、サファイア姫と仲がいいと誤解して焼きモチ焼いてたことがあったような気がする。それがちょっと可愛かったような。

『のはらひめ』という絵本がある。(なかがわちひろ 作徳間書店)
おひめさまになりたい、と思っている女の子のもとへ、ある日、お城からおむかえの馬車が来る。彼女は、その馬車に乗って、おひめさま城へ。
そこで、彼女は、おひめさまになるための様々なお勉強に取り組む。
古今東西いろんな童話のエピソードがもりこまれ、そういえば、こんな話あったなあ、と思い返しながら楽しく読める。ときには、竜と戦う命がけの修行もある。
王子さまが助けに来るのに間に合わないことだってあるし、王子さまを助けないといけないことだってあるかもしれないから、おひめさまだって、つよいほうがいいということで。
がんばった女の子は、最後にどうするのか。
可愛くて楽しいお話だ。
絵本だけれど、子どもより、いろんなおとぎ話も物語も知っている、大人の方がクスッと笑って楽しく読める本かもしれない。読むと元気も出ます。


































2件のコメント

  • 帯状疱疹はひどいお話でしたね。お大事になさってください。

    王子ぼんくら説、笑いながら拝見しました。確かに。主人公の姫にとって幸せの象徴でありながら、微妙に「ソコジャナイ」感をただよわせますよね。

    今年もお世話になりまして、本当にありがとうございました。
    どうぞよいお年をお迎えください。
  • はい。ありがとうございます😊

    そうなんです。王子、微妙に「ソコジャナイ」感、ただよってますよね。笑

    こちらこそお世話になりまして、本当にありがとうございました😊 
    どうぞ良いお年をお迎えください。
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