中村ハル

丁寧に綴られた手紙は美味しい。 Rは、手紙を食べて暮らしている。 手紙をもらうためだけに恋人や友人を作って暮らすR。やがて彼女に届いた、お別れの手紙。 恋愛ものなのかな…。

第七回こむら川小説大賞に参加したくて書きました。成仏する時、どうして幽霊って光る表現なんですかね。幽霊以外の怪異も光るんですかね。

祖母も母も、碌でもない男が好きだった。 あんな男のどこがよかったのかと尋ねると、ふたりで顔を見合わせ「顔に決まってるじゃない」と口を揃える。 「あんたもでしょ。血筋よ」 女と遊び…

文披31題に参加するぞ、と意気込んだもののまっさらだったので、手探りで闇を集めています。 おおよそ140字の掌編。

妻亡き後、一人で暮らす先生の身の回りの世話をするために雇われた友永。 仏間には確かに誰か住んでいる気配がするのに、先生は、友永を決して仏間には入れてくれない。日に日に先生は痩せて…

なんてことない毎日を、のんべんだらりと過ごしているのです。 どうということもない日々の、あぶくのような呟きを、集めて詰め込んでいったら、いつしか海ができたらいいなあ。

僕の指先のささくれが、どんどんと増えていく。彼女は冷たく、友は無関心で、姉は素っ気なくて優しい。増え続けるささくれは、どうなってしまうのだろう。

子供の頃に、祖母の大事にしていた茶碗を割ってしまった。桐の箱に入った、鶴亀の絵付の茶碗。 そのことを思い出したのは、母が亡くなった部屋の押入れに、封印された木箱を見つけたからだ。…

坂上にはやらなければならないことがあった。朝のキッキンで繰り広げられる熾烈な闘い。 お題１「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」

職場の友人が引っ越したので、手伝いに行った。 その古い家にはネズミが棲むという物置部屋がある。

EIという施設に暮らす、ツバメ。 彼ら種族は、一定年齢に達すると翼が生えて羽化をする。ツバメの親友ロビンは羽化を迎えた翌日に、姿を消してしまった。彼のことを覚えているのは、ツバメ…

　友人が、彼氏と揉めていた。同棲をすべく話を進めていたのに、駄目になりそうなのだ。理由を聞けば、まるで会話が噛み合わず、薄寒ささえ覚えるので別れたいという。だから、SNSで話題に…

紗江子のいく先々で、必ず背中を向けて立っている女がいる。 どこの誰かもわからないし、どうやって行き先を突き止めて先回りしているのかもわからない。追いかけ回される不安を友人に相談し…

我が家の前の、駅へと続く道を、毎日同じ顔ぶれが過ぎていく。 見るともなしに眺めていると、自然と特徴を覚えてしまうものだ。 だが、今朝は、いつもと少し様子が違う。

少しずつ荒廃していく小さな町。お年寄りのほとんどと、大人の男たちは、いつの間にか消えてしまった。残されたのは、女と子供と動物だけ。 アメリアと僕は、最後の列車に乗るために、駅へと…

桜の舞い散る春の日に、俺は卒業式を迎えた。 祝ってくれた後輩の棚橋の「先輩、あのね」の言葉の続きは、桜に紛れて聞こえなかった。 数年後、高校生になった俺は、また、卒業を迎えようと…

「第5話　おともだち」を更新しました。 以前書いた「もうひとりの私」の別な話から始まる奇妙な出来事。 みんなが「見た」というもうひとりの私と「それ」は果たして同じものなのだろう…

僕の育った実験コロニーは、ある日、ウイルスによって汚染され、逃げ場を失ってしまった。仲間からはぐれ、独り取り残された僕は、ひとりの老人に匿われて、先輩の助けを待つことになる。 人…

夢とも現ともつかないような、不可思議な短い話。140字程度の一編をお楽しみくださいませ。

寝言に応えてはいけない。 夢と現の境が崩れるから。 田中君には夢があった。クラスメイトの宮内さんと恋人同士になること。 その為に、田中君の仕掛けた大がかりな野望とは。

「僕」の仕事は、不動産屋から依頼を受けた物件を調査する……はずだったのに。気が付けば、いつも曰く付き物件ばかり。上司に指定された物件に向かう途中で、奇妙な出来事に巻き込まれ、それ…

ある日、私は、一体の人形に出会ってしまった。 幾度通えども、店主は決して譲らぬという。一度は諦めたものの、やはり忘れられぬ。 やがて、決心を抱え、もう一度、あの人形を手に入れに行…

闇を採取し、記録している闇屋の星彦。 彼の元に訪れた少年は、闇をひとつ買っていく。 少し不思議な少年たちの、なんてことない日常ファンタジー。

オンラインゲームに突如として現れた「生首を持つ男」の噂。 その噂に巻き込まれた赤坂は、ある日、その「生首を持つ男」のプレイヤーが元同級生だと知る。 些細なトラブルから彼を殺してし…

百物語を始めよう。 口火を切った男が話し始めたのは、幽霊がいるのかどうかという話。 男は幽霊など居はしない、と嘯きながらも、幽霊は透けてなどいないと言い切る。その理由を語り始めた…

朝いちばんでかかってきた電話に出ると、空の色がいつもと違うと言う。 初めて見る空の色とは、一体何色なのだろう。君と僕との頭上に広がる、同じようで違う空。

小さなボストンバッグと一枚の乗船券を持って、夜の埠頭にやってきた。豪華客船の出航を待つ鈴木が出会ったのは、黒いコートの男。船が出るまで束の間交わした会話から、鈴木が思い出したのは…

冬の海など、嫌いだった。海は死骸の臭いがするから。 失恋した私は、海に来た。なくした恋を捨てるつもりだった。 砂浜に埋もれた空き缶から、声がして、それに応えるうちに、私は考える。…

同じ東京に住むのに、君と僕との間には越えられない隔たりがあった。 都会に暮らす彼女と、下町に住む僕は、まるで地上と地方に隔てられたように交わらない。そんな彼女に抱いた想いは、恋に…

謎というほどの謎ではないけど「何で⁉︎」と毎回思ってた。 エレベータで乗り合わせるお爺ちゃんが「私」を見る度に「孫悟空」と言ってくる。 なぜ、そんなあだ名を付けるのか。髪がちょり…

「僕」は友人のJに隠し事を話した。それなのに、Jは碌に聞きもしない。 お互いの秘密を打ち明けた少年たちは、新月の夜に星を狩りに行く。そこに集まっていた少年たちにはそれぞれに秘密が…

惑星間管理局の職員が持って来たのは、遠い惑星で働くあの人の最期の言葉。 美しい透明な盤に収められた声は、たった一度再生すれば壊れてしまう。 失われていくモノと、残るモノ。 儚く壊…

こいつ、誰だったっけ…。ていう人、いますよね。雰囲気が変わった、服装が違う、体型が変化した。 要因は色々あれど、本当にそれ、あなたの知ってる「あの人」ですか。 仕事帰り、駅前で…

新入社員が、しつこい。息もつかせぬほどの質問を浴びせてくる新人に、社員は次々と根を上げた。そんな彼を任された「俺」は、どうにか彼の質問攻めを躱すことに成功したようなのだが…。 君…

先輩がいつも、学校の裏門で会っている女子生徒は彼女だろうか。裏門近くの木でカラスがやけに騒ぐので、様子を見れば、今日も先輩と彼女がいた。 カラスが彼女に襲い掛かったので、享は紙屑…

同僚の佳奈が最近、急に綺麗になった。まるで別人のように華やかに。 その秘密が知りたくて、私は佳奈の後をつけ、雑居ビルに辿り着いた。たくさんの蝶が飼われた水槽のある部屋で、私は男に…

ネットを徘徊中に見つけた古い銀の万年筆。 インクが詰まって書けないことに苛立ち、投げやりに「アラジンの魔法のランプみたいに、魔人が出て来ればいいのに」と願った僕の前に現れたのは、…

外出自粛が続く中、仕事が少なくなった「私」の元に、見知らぬ男がやってきた。リモートワークを始めてみないかと勧められて、挑戦してみた。 ホラーコメディ…？

彼女と待ち合わせしたカフェ。いつも通り遅刻している彼女を待っている僕の前に、見知らぬ男が座った。彼が珈琲に沈めたモノは、何だろう。

ちゃりん、という音と共に落とされた何か。少年に手渡されたのは、私の物ではない落とし物。渡された鏡を返すきっかけを失い、持ち帰ってしまったが…。 オカルトファンタジーです。

交通事故で恋人を失った千沙は、部屋の中に恋人の気配がしていることに気づいた。自分の思い違いなのか、それとも本当に、彼がそこにいるのか。怯えていたある日、千沙はそれを言い当てた「ヤ…

「最後まで読み通せない本がある」尚人はそんな噂を耳にして、その本を探すべく、険しい坂の上にある図書館へと通うことになる。急すぎて登り切れない坂道の途中で立ちはだかるのは、砂糖菓子…

「変なものが写ってたんだ」ある日彼が持って来た写真。ふたりで出かけたハイキングの写真に、写っているという。私は、問題の写真を見つけようと、彼が得意げに差し出したアルバムを開いた。

眠れぬ夜に部屋を抜け出し、公園で出会ったのは、ライフルを担いだ少年だった。季節の変わる夜に、彼が撃ち落としていたのは。

別れた彼が置いていった、バニラの匂いのする煙草。彼を思い出して、煙草の煙を眺める日々。 私が見つけた新しい心の拠り所は、やっぱりバニラの匂いがした。

腐れ縁の友人が、家を建てた。自分で住む家を、自分で設計したらしい。その洒落た家にあるデッドスペース。設計ミスだなんて、笑える。そこがあいつのいいところでもあるのだ。

出口のない密室で起きた殺人事件。 密室殺人らしく、犯人と探偵がそこに閉じ込められているのだが。 探偵は果たして誰の味方だろうか。 ミステリかと思いきや、ホラーなんです…。

海の真ん中に浮かぶ、水のない島。 その空には、魚の骨が繋ぎ止められていた。 その島に調査で訪れたジュールは、ガイドの男に島の伝説について話を聞いた。 ジュールの祖母につながる、島…

僕は別れた彼女からもらった腕時計を捨てられずにいる。みんなは捨ててしまえと言うけれど、何故か手放せずにいた。未練がましく彼女を思う僕は、次第に運からも見放され。そんな僕の前にひと…

紺碧と金の夜の中で、シェヘラザードが語っていたのは、たった一人に捧げる寝物語。 彼女の元に現れた死神が、シェヘラザードに提案したのは、眠れぬ夜を終わらせること。