現代が舞台で、壮大な世界もド派手な魔法もドラゴンも出てこない、登場人物も二人だけで淡々と進むファンタジーは新鮮だった。その効果か、主人公の感情がより強く伝わってくる。気持ちの変化が色とリンクしているように感じるのも良くて、「鈍い銀色にひかるかたまり」も「美しい銀色に輝」く万年筆になった。インクの青が、色を失い「白く寂しい紙」のようであった主人公を染めていく様も綺麗。淡々と進むファンタジーならではの、シンプルな感動があった。