箱庭。 それは、およそ二百年前から貴族の間で人気の美術品だった。 はじまりは、小さなガラスケースの中で植物を育てたり、そこに蝶などの小さな昆虫を加えたものだった。しかしその箱庭の…

静かに雨が降る午後のことだった。 ユレンのもとへ、ひとりの青年がやってきた。 嘘だとわかっていながらその手を取った。 嘘だと思いたくなくて目を瞑った。 けれど、そのやさしい嘘が…

ダイナはいつだって壁の花。 けれどそんな彼女を誘う男がたった一人だけいた。 ダイナの父が団長をつとめる騎士団の騎士の一人、レト・ミシュカス。 いつだって彼はダイナをダンスに誘って…

「仕方ないから！　俺がおまえを嫁にもらってやるって言ってるんだよ！」 十歳の春。わたしたちは確かにそう誓ったはずだったのだ。 しかし約束したはずの幼なじみのアルクスは村を出て街で…

千年王国ナーラライネン。 その国の王は赤龍の呪いを受けている。 呪われた王アウリス。龍花を育て守る花巫女シュルヴィ。 王家の血を残すため、アウリスの身を焼く龍の呪いは花巫女へと…

これは昨今よくあるという婚約破棄。 ただ登場人物は三人だけ。 王子と、その婚約者と、王子の恋人である私。 どうか信じて欲しい。 私は婚約破棄してくれなんて頼んでいないんです！…