この映画は「ジェノサイド」という漫画を描こうと思って買った。
その頃何個もストーリーが浮かんできては形にすると躍起になっていた。しかし自分の頭が追いついていかなかった。
技術など気にせず突き進めばよかったのに、何かに対する反感の感情ばかりが膨れ上がって何も形にすることはできなかった。
多分リアクションがない事が怖かったのだろう。
今なら、リアクションが何もなくてもつき進めると思う。
事もあろうに以前はリアクションが無いと何故か怒っていたのだ。
何に怒っていたのだろう。馬鹿にされていると勘違いをしていたのかもしれない。
この時のノーリアクションの「バカにされた」という感情は侮れないと思う。何故何もリアクションがない事がそう受け止められたのか。これはもう少しじっくり考えた方がいい自分の問題点だと思う。
怒ってなにをしたかというと、ツイートで愚痴ったのと、あとは感想を色々書いたのだが、特に誹謗中傷でないけどあまり評判がよくなくて何故か物凄く絶望感を覚えてしまった。
で、折れてしまったままプカプカと浮き上がり、結局描きたい気持ちも薄まっていた。
が。この映画を観たら、まさに描きたいような内容が描かれていたのだ。
もう少し古臭い映画だと思っていたが
何となく染まり切れないボニー、悪人というには余りにも子供過ぎるクライド、彼は仕事を「強盗」として正式に認めていて特にやめようと思っていない…けれどボニーは彼が「縛られてない」生活をしてると思いついていったのとは裏腹にやはり別のまっとうな仕事をしてほしかったのか悲しそうに目を背けるシーン
はまり切れない何か善悪では割り切れない部分がやっぱり描きたい気持ちを少しだけ持ち上げている。
ワイルドアットハートをその前に見たんだけど、やっぱり何だか似ている気がした。オズの魔法使いをモチーフにしていたけど、俺たちに明日はないの雰囲気はややミュージカルテイストな雰囲気があり、意図したものではないけどそういう部分は何となく似てる気がした。
ボニーの母親はボニーとは真逆でとても地味な女性だった。
私が好きなタイプの老人だった。
母親は保安官に娘を売る事はできず、あなたはその暮らしをしている限り何処にも落ち着けないと言っていた。
「俺達に明日はない」は実際の事件を元に描かれたフィクションだ。
実際のボニーを見ると、よく見る指名手配犯の顔をしていた。クライドも。フェイダナウェイの顔は善良で、傷つきやすい女性の顔をしているので違和感があった。
けれどもボニーは、もし映画を観たら涙を流したかもしれない。こんな風にきれいに描いてくれてありがとう、そんな感情を持ったかもしれない。
そんな切なさのある映画だった。
人は、普通に幸せに生きて死ぬより、追われて波乱万丈に死ぬ方が切ないと思った。