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憧れ

憧れは失望と共に去っていくことが多い。
理由を考えてみた。そもそも憧れは蜃気楼のようなもので
追いかければ追いかけるほど、追いつかないもどかしさに、絶望的な気分になっていくものかも。

それがわかっている人は、遠くで蜃気楼を見て、ただそれがあってくれたことを喜んでずっと見ている。
写真に撮ったり、部屋に飾ったりしてそっと。
だから消えてしまった後でも、その記録を残すことができる。
けれどもひたすら追いかけて掴もうとすると
写真に撮ったり、部屋に飾ったりできる事をすっかり忘れてしまう。

憧れは記憶として留めておく
これがいい付き合い方なのかもしれない。

記憶ははかないようで永遠なのだ。
辛い記憶は消そうとする。
記憶しておこうと思った記憶は大切に取っておく。

大切に取っておくことの意味を知ると
もう少しこの世界での呼吸がしやすくなるのかも。


例えば友達との楽しい想いでも、何が何でも再現しようと躍起になると思い通りには行かない。
違う、そうじゃない、焦る自分に対して相手が不自然な努力に嫌な思いをすることもあるだろう。疲れて帰ってしまうかも。
でも楽しい想いでがたった一度きりの大切な記憶だと自分の記憶に刻み付けておけば
ある瞬間に
ーあ、この感覚。あの頃と同じだ。
そんな時が来るかもしれない。

再現しようとしてもその時は来ると思う。
でも多分、もう諦めて忘れた頃に来るのだろう。
二度とこない、そう絶望することもあるけど、その絶望に焦ることもあるけど
いつかはきっと。
いつもきっと。
何か別の大切な記憶が刻み込まれて
不意にそれに気が付く瞬間があると思う。

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