こないだハンバーガー屋さんに行ったときのこと。
カウンターに並ぶ間に子どもたちの注文を確認する。
「次女はいつも通りナゲットのセットでいいよね?」
「おう!」
「で、長女はどうする?」
「このアボカドバーガーっての食べてみたい」
「おお、いいね。なんにでも興味持って挑戦するのは良いことだ。飲み物はメロンソーダ?」
「いや、アイスコーヒー、かな」
ちょっと格好つけた言い方をする。そういう年頃なのか。
「だいじょぶ? 苦いよ?」
「大丈夫だよ。こないだ友だちと遊びに行ったときに飲んだもん」
そう言って長女は指で髪を耳の後ろに流した。
おお……背伸びしとるなあ。
ついこないだまで、駄菓子屋で買ってきた体に悪そうな色の粉ジュースをウッキウキで飲んでたのになあ。
「……で、サイドメニューはポテトで良いかね?」
「うーん、コールスロー、かな」
「待て待て待て」
「なになに?」
「なんだコールスローて。突然どうした」
「え、普通じゃん」
「普通の子どもはコールスローなんて注文しねえ。OLかお前は」
「なんや!」
「……いやスマン、『普通』って言葉を使うのは良くないわ。人それぞれ違っていい。でもな、娘がアホになりかけてたら正してやるのも親の役目なんだ」
「大丈夫だって。ナツキがいつも食べてるって言ってたもん」
なるほど、子どもは友だちと競い合うようにして大人になっていくのか。
言われてみれば、ぼくらの時もそうだったかもしれない。
子どもの背伸びは飛び立つ練習だ。
いつか親の庇護から離れていくための。
それは喜ぶべきことで。
だけどやっぱり、ちょっと寂しい。
寂しいけれども。
子どもが背伸びしようとするのを止めるのは良くないよね。
結局、長女は意志を貫いてコールスローを注文した。
それを見ながらぼくは思った。
この子はきっとこの先、すごくたくさんの黒歴史を積み上げていくんだろうなあ、と。
とりあえず、下の画像を作って夜のあいだに長女の携帯の待ち受け画面に設定しておいた。
