• に登録
  • エッセイ・ノンフィクション
  • 現代ドラマ

コールスロー

こないだハンバーガー屋さんに行ったときのこと。

カウンターに並ぶ間に子どもたちの注文を確認する。

「次女はいつも通りナゲットのセットでいいよね?」

「おう!」

「で、長女はどうする?」

「このアボカドバーガーっての食べてみたい」

「おお、いいね。なんにでも興味持って挑戦するのは良いことだ。飲み物はメロンソーダ?」

「いや、アイスコーヒー、かな」

ちょっと格好つけた言い方をする。そういう年頃なのか。

「だいじょぶ? 苦いよ?」

「大丈夫だよ。こないだ友だちと遊びに行ったときに飲んだもん」

そう言って長女は指で髪を耳の後ろに流した。

おお……背伸びしとるなあ。

ついこないだまで、駄菓子屋で買ってきた体に悪そうな色の粉ジュースをウッキウキで飲んでたのになあ。

「……で、サイドメニューはポテトで良いかね?」

「うーん、コールスロー、かな」

「待て待て待て」

「なになに?」

「なんだコールスローて。突然どうした」

「え、普通じゃん」

「普通の子どもはコールスローなんて注文しねえ。OLかお前は」

「なんや!」

「……いやスマン、『普通』って言葉を使うのは良くないわ。人それぞれ違っていい。でもな、娘がアホになりかけてたら正してやるのも親の役目なんだ」

「大丈夫だって。ナツキがいつも食べてるって言ってたもん」

なるほど、子どもは友だちと競い合うようにして大人になっていくのか。

言われてみれば、ぼくらの時もそうだったかもしれない。


子どもの背伸びは飛び立つ練習だ。

いつか親の庇護から離れていくための。

それは喜ぶべきことで。

だけどやっぱり、ちょっと寂しい。

寂しいけれども。

子どもが背伸びしようとするのを止めるのは良くないよね。


結局、長女は意志を貫いてコールスローを注文した。


それを見ながらぼくは思った。

この子はきっとこの先、すごくたくさんの黒歴史を積み上げていくんだろうなあ、と。



とりあえず、下の画像を作って夜のあいだに長女の携帯の待ち受け画面に設定しておいた。





6件のコメント

  • おはようございます!
    長女さん、朝起きたら待ち受け画面が↑になってたらビックリですね😆
    サクさんは家でもいたずら心のある面白いパパさんで、すごく楽しい家庭なんだろうなーと。ホッコリした気持ちになりました。
  • マリーさん、おはようございます!
    面白いパパさん、いいですね。
    そうありたいと思うのですが、いかんせん真面目なだけを取り柄に生きてきましたので、冗談のひとつも言えません。

    「勝手に待ち受け変更」は数少ないコミュニケーションツールのひとつなのですが、最近スマホにパスロック設定したいとか言い出しております。大変だ。
  • アボカドにコールスロー、長女ちゃん健康的なチョイスですね。

    髪を流す仕草、可愛い!

    わかりやすいアホな男の子しか育てたことがないので、彼女達のこれからの成長が楽しみです。
  • ゆりえさん。

    うちにもアホな女の子しかいませんよ。
    結局コールスローはお気に召さなかったようで、妹とポテトをウホウホ取り合いしてました。
    アホなのに格好つけようとするのは面白いですが。
  • こんばんは! サクさん。

    アボカドにコールスロー!! 長女ちゃん、大人!! 未だにコールスローにしたことなく、ナゲットをぱくついてます。

    待って……! 聖闘士星矢のキャラなのはわかるんですが、誰かわからない!教えてください。アンドロメダの人とかその兄しか覚えていない……
    長女ちゃんはわかるんですか?その待ち受け見た時の反応考えたら可愛い😊 

    こんなイタズラ心を持っているお父さんがいて、長女ちゃんたち、幸せだなぁ……。羨ましいです!

    娘さんたちとのコミュニケーション、楽しんでくださいね。サクさんなら思春期になっても、娘さんたちに慕われてそう……!!良いパパですね。
  • こんばんは、心春さん。

    彼の名前はミスティ。「神よ、私は美しい」とか言ってしまうナイスな聖闘士です。

    もちろん娘は車田先生を知りませんが、100%イジられているのは理解したようです。

    実際にコールスローが出てきた時の会話です。

    長女「……キャベツじゃん」

    ぼく「逆に何だと思ってたんだ」

    これからもっと思春期をこじらせていくんでしょうね。

    鬼滅の刃の映画、楽しみにしてたのに友だちと行く約束しているそうです。
    悲しいです。

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する