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参勤交代がもたらしたもの

といって、ご紹介するのはこの妖怪双六なのですが。
みんなが大好きな妖怪は、江戸時代までにその原型が出来上がっていたといってよいかと存じます。

今回ご紹介の妖怪双六を見ていただくと、唐傘お化けや海坊主、河童に猫又なんておりまして、大体この辺りは妖怪に詳しくなくても知っている人の多い、認知度高め、人気も高めな妖怪ではないでしょうか。

一つ一つ、つらつら眺めていきますと、それなりに時間がたつのを忘れてしまうのですが、もともとこれは双六です。サイコロを用意していただいて"ふりだし"のコマから始めますと、まず、出た目にしたがって雪女郎や河童のコマに行け、と書かれております。

サイコロを振り、コマを探しているうちに、様々な妖怪のことを覚えてしまう、江戸の双六にはそんな学習要素もありました。妖怪だけでなく子供に教養を学ばせるような、また大人が遊んで楽しい(いろんな意味で)双六など、多くの双六が出版されておりました。

で、この妖怪双六に関しましては、面白いですよね、江戸の妖怪も地方の妖怪も同列に描かれているのです。これは江戸時代に地方と都市を多くの人々が行きかった文化交流の証かと思うのです。

農民の旅行は一生に一度、どこかの神社仏閣の講に入って、例えば羽黒山に参詣の旅に出たり、お伊勢さんにお参りに行ったりするのが関の山、けれど大名は参勤交代という制度によって頻繁に江戸と国許の行き来を義務付けられていました。

参勤行列に従う人数も多ければ、江戸で彼らに雇われる町民も多かったはずで、そこで中央と地方の文化交流が自然と生じたものと思われます。

「土佐の蛸入道」と「提灯お岩」(これは四谷、江戸の代表的な怪談です)、「玄界洋(灘)の海坊主」に「妙高山の山童」。地方色豊かな妖怪が勢ぞろいしております。おもしろいですね。

江戸という時代は、クニごとに独立した統治や、居住する場所の厳しい制限など、一見、人的交流が乏しかったようにも思えますが、案外に文化のシャッフルは起きていた、そんなことを偲ばせます。

そろそろ今年のGWが近づいて参りました。
こんな江戸の遊びでも、長い連休のひとときに、眺めてみてはいかがでしょうか。

……わたくしといたしましては、江戸の双六にスカイフィッシュがいる(左の上から2番目!)のが気になるんですよね ( ゚ω゚) Unidentified Mysterious Animal, UMA!

*資料は国立国会図書館デジタルコレクションから引用しています。
百種怪談妖物双六 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1310691?tocOpened=1

2件のコメント

  • ほぉ、面白いですね。
    画面を大きくしてじっくり見ました。

    クオリティーが高くて、勉強にもなる双六って!
    ちょっと怖いです。

    スカイフィッシュいますね。おお!
    怪談って怖いですが、絵にするとなんか味があっていいですね。
  • 星都さま

    夏になるとメディアに取り上げられがちな今の妖怪とは違い、すごく湿っぽい怖さというのが感じられます。

    絶対に分かり合えない、人とは別の存在感が強いかな、と。ちなみにこの双六の河童、胎児というか新生児からエナ、すなわち胎盤を取ろうとしています。

    現代のホラーは即物的な怖さがメインですが、害は無いけれど何かが無性に変、と感じる隠微な生理的違和感が江戸の妖怪にはあったのかと思います。

    そんな違和感も怪談であると江戸の人達が思っていたのだとしたら、星都さまの感性は当時に通じるモノなのかもしれませんね(あのカマキリのお話のように)。

    コメントありがとうございました!
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