• 現代ドラマ
  • 歴史・時代・伝奇

江戸のファストフードな取材ノート。

「翠雨」のために取材した江戸のファストフードの取材ノート、ようやくオープンです。

江戸の町は外食が流行っておりました。
その流行りの最もたる例が以前にもご紹介いたしました料亭文化(https://kakuyomu.jp/users/gonnozui0123/news/16816700429357187898 )なのですが、そんな庶民には手の届かない高級料理とは一線を画し、お手軽、迅速に食事ができる、いわゆるファストフードもまた江戸の食文化の一角をなしておりました。

そんなファストフードは主に屋台で売られており、町人の毎日の食事となっていたようです。ま、いうて冷蔵庫がない時代ですからね、食材を狭い長屋のどこにも抱え込んでおけませんから、外食やテイクアウトした食べ物を自宅で食べる中食が普通だったと、そんなところです。

最上段に当時の屋台の絵を貼りましたが、顧客層はというと、うん、独身町人男性でその日暮らしの日銭稼ぎな皆さんですね。左側、それでも手拭いで顔を隠して天ぷらを買いに来ているのは、腰に二本差し、武士もまた買いに来ていたそうです。

そうして今回ご紹介するのはそんな江戸のファストフードのうち、天ぷらと、いなり寿司と、握り寿司とさせていただきます。

天ぷらは食用油、特に菜種油の収穫が一定以上確保されるようになって、庶民の食べ物となりました。江戸前の海産物や近郊で採れる野菜なんかを串に刺して油で揚げ、一本いくらで売っていたそうです。

今で言うと串カツなんかが近いでしょうかね。

稲荷ずしも人気のあったファストフードです。
油揚げを甘辛くした味付けは当時からのものだそうです。
私も稲荷ずし、大好きなんですが、稲荷ずし専門店の豆狸というお店の稲荷ずし、皆さんもご存じでしょうか、あそこのいなりずし、おいしいですよね。おいしいけど小さい( ゚ω゚)フマン 他にもスーパーの総菜コーナーで売っていた黒糖いなりがおいしかったなあ……

ともかく、写真、よく見ていただくと分かるように、稲荷ずしの屋台では竹皮に包んだお持ち帰り用も用意されております。一杯飲んだ帰り道、目についた屋台でふらりと買って持ち帰り、酔い覚ましの水と共に一つ口に放り込んでから寝床に潜り込む、そんな江戸のさえない町人の暮らしが見えてくるようでございます。

……わたくしの酒癖ではございません。

それから稲荷ずしではなく、いわゆる寿司。これも江戸の食文化を代表するファストフードです。

料亭なんかで出される寿司は生魚を使ったものがあったりと今とさほど変わらぬ形態をしていたようですが、屋台で売られていた寿司は少々趣が異なります。写真、江戸時代の握りずしと記された写真をご覧ください。

これ、大きいんですよ。
私の手は少々大きめサイズなのですが、それでもその掌に余る大きさがあります。
っていうか、鮎丸一匹使ってるじゃん!(´Д`;)

だいぶ野趣あふれる寿司が江戸時代のスタンダードだったようで、屋台で売られる寿司は基本酢〆の魚が使われていたようでございます。

鮎丸一匹の握りずしのインパクトがあまりにも大きく、うっかり「翠雨」中にも登場させようかと思いましたが本筋がズレてしまうので諦めました。番外編で書きたいところです。

弘紀は「江戸で食べておいしかったものリスト」、作っていてもおかしくないよなあ、と。そして修之輔がぜったい書いている「お土産リスト」と照らし合わせるようなお話なら、うん、書けそうですね……

そんな脇道枝道分かれ道な「翠雨」本編、まだまだ絶賛校正中です。
なんとか頑張って4月中にkindleで公開したいと思っております。
Kindle公開の折には、また無料キャンペーンのお知らせなどをここでさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

*掲載資料は国立国会図書館デジタルコレクションより引用しています。
職人盡繪詞. 第1軸 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11536004?tocOpened=1
写真は深川江戸資料館、ならびに味の素「 食とくらしの小さな博物館」で撮影したものです。

2件のコメント

  • こ、これは行くしかないですね。『江戸の社会学』っていう本を見て、江戸の発展に魅せられましてね。
     甘いだけが稲荷じゃないんですね! ああ、最近甘党とはいえ、塩辛いのが好きなので、将来僕は割と飲むかもです。
  • 一盃口さまも江戸に興味を持たれましたか!
    あれだけの長期間、安定を保っていた社会は世界的にも珍しいと思うのです。

    社会が安定していると文化が発展するという、江戸時代はまさしくそんな時代だったのかな、と思います。

    甘いものでも辛いものでも、美味しければ酒のつまみです( ゚ω゚)
    アルコールは味覚の閾値を下げますから、酒が旨ければつまみも旨いの相乗効果です。

    一盃口さまも是非、お酒を娯しむことができるオトナを目指してくださいませ!
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する