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物語が始まらない『道路』

 タールのように黒光する道をよたよたと走る。

 道幅は軽自動車なら3台でも並べそうなほどに広い。少なくとも窓の横すれすれを対向車が通るなんてことはなかった。

 しかし、どうにも落ち着かない。対向車を避ける為、山肌に生えるシダ植物に車体をこすりつけるような感覚だ。頭では理解していても、感情が「この道は狭い」と訴えてくる。

 真新しく舗装され、黒光りする道。気持ちばかりの白点が、ここが道路の中央だと主張している。

 点線とも呼べないような白点を頼りに、私は今日もよたよたと走る。

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