白洲尚哉です。
しばらくはカクヨムに投稿ができなさそうなので、投稿した作品の創作裏話を語ります。
まず、「マオグイの家」を書くに至った経緯について。
本作を執筆したのは2024年の9月です。当初は、京都大学推理小説研究会の機関誌に寄稿するために書いたものでした。
ここ数か月で僕を知った人は、おそらくカクヨムU-24杯優秀賞を受賞した本作で僕を知ったのでしょうが、実はホラーミステリは僕が従来書いてきたものではありませんん。「マオグイの家」は大学3年のとき、僕が初めて書いた本格的なホラーミステリで、それまで僕が得意と自負するジャンルは伝奇活劇と百合でした。
大学3年のとき、一度ホラーミステリをちゃんと書いてみようと思い立ちました。
これまでの僕は妖怪を物理的に殴って倒す話を軸としてきましたが、ミステリ研にいる間に、やっておこうと思ったのです。
そこで、題材を選ぶために、これまで書いてきた作品のモチーフと舞台を見返してみました。妖怪伝承が明確なモチーフにある作品でこれまで書いてきたのは、「根香寺の牛鬼/山・離島」「両生類的なモンスター/山」「大江山酒呑童子退治伝説/街」「磯女・濡れ女子/海」、不足しているのは肉体を持たない霊魂や憑き物、呪術モチーフ、舞台としては家がありませんでした。そのため、憑き物と家で構想をはじめました。
実は構想を始める数年前から、蠱毒や犬神のアイデアはずっとありました。どちらも、「意図せず条件が揃ってしまい、事故として蠱毒・犬神が出来上がってしまった」というオチです。しかし、それを描くストーリーがなかなか組めず苦心していたとき、たまたま猫憑きの実話怪談を読みました。そこで「猫鬼」のモチーフと蠱毒のアイデア、猫憑きの実話怪談が融合し、火種のようなものが生まれました。
「マオグイの家」を書くにあたり、意識したことは次の3つです。
1.妖怪・怪異の存在を前提とした世界観(世界の見方の意)に基づく論理。
2.捜査小説として、主人公たちの行動を主軸に、それを淡々とした筆致で描く。
3.アクションシーンを入れず、調査シーンは緩、恐怖シーンを急としてメリハリをつける
以上を意識しながら、ホラーミステリとして面白いものを目指しました。
ここでは、それぞれを実行するときにどうやったかを書いていきます。
1をするにあたって、妖怪を視えない調査者/視える解決者を用意しました。これ自体は、大学1年のときにミステリ研機関誌に寄稿した作品で試み、十分にできなかったものです。視えない調査者が情報を集めるも、視えないが故にそれぞれの情報を最後につなぎ合わせることができない。同じ世界に生きながら、視えている風景の違いで真相に行きつける者と行き着けない者に分かれる。才能の残酷さ、無いものねだり。これらのイメージが、深寺と灰門の構図の根幹にあります。また、真相については、一番最初に考えました。元々、「条件が揃ってしまって事故として蠱毒が完成した」からスタートしているので、これが生きるストーリーを考案しました。そのため、世界のルールとして蠱毒の作り方を冒頭で示し、適宜、妖怪・怪異の実在する側の世界にいる灰門にその世界の法則を喋らせました。最後の蠱毒を作った男の録音が消えるオチは、そこまでのストーリーが全部できたあと、「解決編までできたけど、ホラーミステリっぽい意味深な怪奇オチが欲しいなあ」と思っていたときに、冒頭で世界観設定を伝えるために出した蠱毒が使える! と思って付け加えたものです。
2を捜査小説的に描くために、調査先が数珠つなぎ的に次々生まれるようにストーリーを考えました。深寺一人では能力に限界があるため、ライターである乙野を登場させ、二馬力で情報が集まってくるようにして捜査を動かすようにしました。淡々とした筆致を目指していたため、主人公の深掘りがおろそかになったのは反省点です。これは今後の課題とします。また、調査時の会話や所作は、僕の調査経験をもとにしています。僕は大学で民俗学を専攻していて、現場に赴きインタビューなどをしてきたので、そのときの方法を参考に書きました。
3をするにあたって、これは結構賭けでした。アクションシーンにこれまで定評があったため、それを一切入れずに(最終盤にお祓いの場面はありますが)盛り上げるのはなかなか苦労しました。お祓いの場面はカクヨムでは好評のようですが、ミステリ研では「もっとできたと思う」という評価が多かったです。なまじバトルシーンで魅せてきたので、それくらいの映える場面を期待されていたのだと思いますが。
調査シーンは会話が主体なので停滞気味になります。そのため、そこで得られた怪異体験談で恐怖を演出することにしました。しかし、全体的に淡々としているため、次は文体の湿度を操作していければなと思います。
以上が「マオグイの家」の制作中に考えていたことです。
こんな感じで、投稿した作品の裏話をちょくちょく投稿していこうと思います。
今日はこのへんで。では。