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えっ…? その1

ウミガメのスープ問題のような、推理の根拠をテキストの中に読み取ることのできないミステリはアンフェアだと思います。読者も一緒に謎解きを楽しんでもらいたいのなら、事件の真相がただ1つに着地すると納得してもらえるだけの伏線を張っておくべきではないでしょうか。

例えばなんですけど、私がついさっき読んだミステリ作品を要約しますね。
「とあるミュージシャンの新曲動画にアンチコメントが付き、ファンたちは一斉にアンチの人を誹謗中傷しました。しかし後日、そのミュージシャンが[酷いコメント]として取り上げたのは、ファンたちの過剰にミュージシャンを擁護しているコメントでした。なぜそんなことが起きたのでしょう?」
という読者へ出題する形式の小説でした。

答えは
「アンチコメントが作品を称賛するコメントに書き換えられており、ファンたちの擁護コメントは[ファンを誹謗中傷する酷いコメント]に変わってしまっていたから」
とあります。

ですが出題文の情報からはそうであると断定できません。例えばツリー親のコメントの削除の後も返信コメントが残るタイプの動画投稿プラットホームであった場合、ミュージシャンは削除されたコメントに群がる誹謗中傷的な言葉の数々を見てどう思うでしょうか。

それにテキスト外の情報から該当の小説の謎を推理しても良いなら、現在は魚拓を取る文化がありますし、youtubeなどならコメント編集の履歴を遡ることができます。ミュージシャンが[酷いコメントをもらった]と勘違いしてファンの擁護コメントを晒し上げる行動に出るとは考えにくいです。

答えを作中で示さずに読者に解いてもらおうとするのであれば、例えば東野圭吾さんのように回答候補を2つや3つに制限しておくとか、きちんと答えがただ1つに決まる根拠をテキストに組み込むとか、しっかりと工夫を凝らす必要があります。

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