『やつと私と雨の庭』の連載をすることにしました。いつもの感じの不定期連載予定です。
この作品は、丹下左膳と彼を演じていた映画俳優大河内傳次郎をモチーフ・モデルにした作品になります。
ただ、主人公の大庭さんは史実とあまり合わせないかもしれません。(あと、おうちの間取りも合わせない感じです)
というところの実在の人物団体とは関係のないフィクションなお話で、演者と演じられるキャラクターの関係に、ほんのりだけホラーみのあるひんやりした伝奇ものを目指して書いていくお話になります。
そしてこれは、わたしが丹下左膳が好きなゆえに書いたものです。
他にもU-RED in THE HELLといった彼をオマージュした作品を書いていましたが、それに飽き足らず書いてしまいました。
初夏までのお話をまとめたものをBOOTHにて無料の電子書籍として配布していましたが、自分的には結構珍しい作風で、それなりに気に入っていたこと、版権も切れている作品をモデルにしているところも一応大丈夫かなというのもあり、こちらでも公開するようにしました。
公開に当たって、電子書籍からさらに加筆修正をしています。
この作品を書いた理由のひとつには、原作者の林不忘こと長谷川海太郎の元に、イマジナリーな存在の左膳がいたらしいということがありました。(ちなみに彼の奥様のインタビュー(『日本伝奇名作全集第五(林不忘)番町書房1970年』に記述が載っているのを確認しました。国会図書館デジタルコレクションで閲覧できます)に書いてあるのですが、真夜中に夜食を持っていくと、執筆中に側に来て座っていたそうです)
林不忘は三つの筆名を使い分けて、書きまくっていた人ですが、その分の過労がたたったのか、早くに亡くなってしまいます。
それでは作者の彼が早くに亡くなってから、イマジナリーな彼はどこにいっちゃったのかなと思っていました。
一方、彼を演じた俳優で最も有名な大河内傳次郎については、以前から調べてはいたのですが、だいぶん変わったエピソードのある人で、伝奇や資料を調べても、イマイチ性格が掴めず、不思議な人だなーと思っていました。
めちゃめちゃ内向的で俳優らしくないし、本当にめちゃくちゃ激しい殺陣をするし、あまつさえ真剣振り回していたらしいし、本当にキャラが掴めない。
高峰秀子のエッセイでいくつも顔がある……と言われていたのも納得です。
私的には正体を隠そうと、敢えて虚無僧の姿で汽車に乗ってたら、不審すぎて目立って通報されて捕まったのがお気に入りエピソード。
そんな彼が大河内山荘という庭を、永遠の美を求めて作ったことは有名ですが、彼の全盛期の映画フィルムの多くは本当に戦中戦後の混乱で消え失せてしまって現存しないものが多いのです。彼は晩年は脇役に周り、かなり寂しい配役でも承知して働いていましたが、それは庭の造成資金を稼ぐためといわれていました。そんな彼に、息子さんが「寂光の中に立つ」と表現をされていて(アサヒグラフの記事で)、それを知ってから余計に興味が湧きました。
そうこうしているうちに、大河内山荘に、左膳の屏風絵があったのを思い出し、永遠の美を求めて作ったあそこに左膳がいる限り、左膳は消えずにずっと残るんだよなあ、としみじみ思ったことがありました。
そして、どうやら大河内が、左膳のことを愛していた気配がインタビュー記事などを読んでみると感じられました。俳優の中には、当たり役を嫌う人もいるので、彼ももしかしたら……とちょっと思っていたので、これは嬉しいことでした。
となると、ある意味で、親を亡くした彼が立ち寄ることができるのはそこしかないのではないかとも思いました。
その後、演者と演じられるキャラクターの関係性の話を描きたいと思った際、やはり彼らで書くのが良いと思いました。
左膳役者は他にもたくさんいて、好きな推し俳優もいたりするんですが、やはり左膳との付き合いが長く、その黎明期から携わっていた彼が相応しいと思い、モデルとしてこの話を書き始めることになりました。
初夏までの第一シーズンは元の電子書籍もあるので、ひとまずは、まったり手を加えながら連載する予定です。
よろしければお付き合いいただければ嬉しいです。
ついでに元ネタの彼らにも目を向けていただければ、一ファンの私としては布教できて泣いて喜ぶ気持ちです。
よろしくお願いします。