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くろてんゲーム化エッセイ-29.世界包括神話-ギリシャ編(2)

どうもこんにちは、遠蛮です。これからしばらく引っ越しで(引っ越し先にネット環境が揃ってないので、接続ができるまで)お休み、ということになります。語りたいことは多いですし、この「世界包括神話」の項もいろいろ書きたし、描き直しをしたかったり(とくにロシアのブィリーナについて、もう少し踏み込みたかったりしました)だったのですが……まあネットが使えなくても執筆はできますし、1ヶ月ほどお休みの間にいろいろ書きためておくとします。

それでは、本日はギリシア編の2。英雄伝説からペルセウス伝説いきます。

ペルセウスはアルゴスの英雄。ゼウスとアルゴス王アクリシオスの娘ダナエの息子で、その祖イオはゼウスの正妻である女神ヘラの巫女でゼウスの寵愛を(無理矢理)受けていますから、ゼウスとしては自分の娘を犯したようなものです。このへんの倫理観のひどさがギリシャ神話の魅力なのか嫌になる部分なのか、判別しかねますが。まあこういう話はもともと土着の神話を新しい主権者であるギリシア神話が接収して飲み込んだ、という背景があったりです。ダナエの懐妊については室内にいるダナエにゼウスが金の雨となって降り注ぎ、それによって懐妊したということです。屋根とか雨よけの意味ないですね。

 アクリシオス(ローマ皇帝にアレクシオスって人がいて、そのひと好きなので妙に知り合い意識というか親近感ありますが)はダナエの息子に自分が害されると予言されましたが、ダナエの出産について、まったく気づくことがありませんでした。気づいたときには嬰児を抱いたダナエがいましたので、アクリシオスは激怒します。まさか娘の不義密通の相手が神王ゼウスとも思わないので当然ですが。とはいえ可愛い娘を殺すわけにもいかないので不貞の娘と嬰児を箱に詰め、海に流しました。

 ダナエと嬰児はセリポス島という島に流れ着き、そこで島の王ポリュデクテスの弟ディクティスに拾われます。ディクティスは心優しい人物で嬰児ペルセウスはディクテュスを義父としてすくすく育ちますが、しかしディクテュスの兄、王ポリュデクテスは奸佞邪知の強欲な悪党であり、ペルセウスを15才くらいまで育てて30過ぎてもなお容色美しいままのダナエに懸想してしまいます。ダナエは若くたくましく育ったペルセウスを頼りとし、ポリュデクテスはおなじだけペルセウスを憎み疎んじました。

あるとき祝宴への進物を募ったポリュデクテスは、このとき進物を持って来ることができなかったペルセウスに「じゃあゴルゴンの首でも取ってこい」と無理難題をふっかけました。このゴルゴンという三姉妹は海ポントスと女神ケートーの間に生まれた怪物で、青銅の手と黄金の翼を持ち、そしてその顔を見た相手を石と変える力を持っていました。さらにはそのすみかを知るのはグライアイ(老婆の精霊)だけで、そもそも探し当てることすら難しいのです。

しかしペルセウスには彼を神王の子と知る女神アテナの加護があり、女神の案内を受けたペルセウスはまたヘルメス神から飛行の靴と隠れ身の兜を授かり、妖精(ニンフ)ナイアデスからはゴルゴンの首を入れるキビシスという魔法の袋を授かりました。

アテナの案内のもとまずグライアイのところに忍び込んだペルセウスは、グライアイの三老婆が共用する一つの歯と一つの目を交換している最中にとり上げ、脅迫し、そしてゴルゴンの居場所を吐かせます。

そしてゴルゴン討伐。このとき三姉妹は眠っていましたが、そもそも長姉のステンノー、次姉のエウリュアレーはともに不死であって殺せません。ペルセウスは末女のメドゥーサに狙いを絞って彼女を討ち取るつもりでしたが、うっかり顔を見てしまえば石になってしまうためまっすぐ近寄ることもできません。このときアテナ女神はペルセウスに鏡の盾を授け、ペルセウスはそれを頼りにメドゥーサに近づくと鍛冶の神ヘパイストスから借り受けた鋼鉄製の鎌でメドゥーサの首を落としました。このときメドゥーサの首から血が噴き出して二人の姉を起こし、激怒させたので、ペルセウスはメドゥーサの首を回収すると姿を隠したままその場を急いで立ち去ったと言うことでした。英雄の立ち回りとしては地味かつなんだか情けないのですが。

セリポスに帰る途中、エチオピアに立ち寄ったペルセウスは波打ち際の巨岩に一人の少女が鎖でくくりつけられているのを見つけます、この少女は皇女アンドロメダ、王ケーベウスと女王カシオペアの娘で、カシオペアが自分の容姿を自慢してネレイデス(海の妖精たち)の誰一人、自分の美貌に及ぶまいと言ったがために海神ポセイドンの怒りを買い(ポセイドンの妻はネレイデスの一人)、海獣の人身御供としてその身を捧げることを要求されたのでした。

ペルセウスはアンドロメダ救済を約し、王にアンドロメダとの結婚を要求します。王としても海獣よりマシ、ということでこの要求を受け入れました。

ペルセウスは岩間に隠れて海獣が訪れるのを待ちました。そして海獣が現れるやすさまじい格闘の末にこれを倒し、メドゥーサの首をつきつけて石と変えます。現在もエチオピアの海岸にはこの海獣が姿を変えた石があると言い伝えられています。

海獣を倒し、アンドロメダを伴って凱旋したペルセウスですが、今度は王弟ピーネウスから攻撃される憂き目に遭います。ピーネウスはもとアンドロメダの婚約者で、海獣を恐れてアンドロメダを諦めたものが、海獣が払われると未練を起こしたのでした。しかしペルセウスは慌てず騒がず、メドゥーサの首をつきつけてピーネウスとその一党を石に変えてしまいますが。

約一年、エチオピアに逗留して一子をもうけ、この子をエチオピアの継嗣として残すと、ペルセウスは妻アンドロメダをともないセリポス島に戻ります。しかしそこでは王ポリュデクテスの猖獗きわまり、母ダナエは庇護者ディクテュスに守られてゼウス神殿に逃れましたが、囲まれて餓死寸前でした。当然ペルセウスは激怒。王宮に乗り込むや問答無用でメドゥーサの首を掲げ、王とその一味をことごとく石に変えます。その後ペルセウスは恩人で義父のディクテュスを島の王に据え、自分は妻アンドロメダと母ダナエを伴ってアルゴスへ向かいました。

アルゴスにて、ダナエの子が帰ってくると聞いたアクリシオス王は恐怖におののきました。ダナエの子が自分を殺すという予言を授かっていたからです。しかしこの王は心の優しいところがあり、孫と戦うことを望まずアルゴスからこっそりと逃げ去り、テッサリアのラリッサという街に身を隠しましたが、このときペルセウスも祖父の消息を尋ねてラリッサに来ています。そしてたまたま運動競技(ギリシャには記念日に運動祭を催して神に奉納する習慣があり、これがオリンピック競技のルーツになりました。正式に始めたのはヘラクレスだということです)が催されていたのに参加したペルセウスはこれに参加、円盤投げのさなか手元が狂い、見物客の中に飛んでいった円盤が老人の頭を割りました。この老人がだれあろうアクリシオス王であったということです。

ギリシャにおいて近親殺しの罪はなによりも重く、ペルセウスは悲嘆に暮れました。アルゴス王を継ぐことをはばかっていとこに当たるメガペンテースに領地の交換を申し入れ、自分はティーリュンスに住まうこととします。その後はひっそりと、アンドロメダと仲むつまじく暮らし、多くの子孫を残しました。その一人がギリシャ最大最高の英雄、ヘラクレスです。

以上。本来「ギリシア-英雄伝説」編は全部済ませておきたかったのですが、時間切れです。ちなみに遠蛮のこのテキスト、当然ながら全部自分が研究して書いたとかそんなすごいことしてるわけがなく、先哲の名文の焼き直しです。なので神話についてもっと深く知りたいかたには「青土社」の神話シリーズとかをオススメして、ひとまず1ヶ月ほどお休みさせていただきます。

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