「お願いします、私に彼を返してください」
「…なんで今さら言うんです?彼を手放したのは、貴女じゃないですか。それに、私は貴女と別れた後に彼に告白して、彼も頷いてくれました。全てお互いの同意の上でのことです。返すもなにもないですよ。違いますか?」
「…それは」
なにも間違ってない。
彼女の言ってることは正しかった。
ちゃんと手順も踏まえたうえで、彼と付き合っている。これを聞いて、彼女を批判する人はいないだろう。
でも、
「…時間を置くつもりだったの」
「……時間、ですか」
「時間を置けば、お互い冷静に考えることができるようになると思ってた。私達の間にいつの間にか生まれてた溝も、埋めることができるなにかが思い付くんじゃないかなって…だから、私は…」
「別れることに同意したと。そのほうがお互いのためだから。なるほど、確かに間違った考えじゃないかもしれませんね。私でも同じ状況なら、それを選んだかもしれません」
「なら…」
「でもそれって、別れたうえで、お互い誰とも付き合わないことが前提での考えですよね?そして同時に、お互い好きであることが前提の考えでもある」
「っ…!」
一瞬、言葉が詰まった。
図星を突かれた気がしたからだ。
「貴女は彼が他の人に告白されたり、付き合う可能性を除外していた。もしくは、されたとしても自分のことを好いていてくれるからどうせ断るだろうと思っていたんじゃないですか?」
「そんなことは…」
「ありますよ。だって貴女は人気者で、誰からも好かれる優等生ですから。そんな自分の彼氏だった男の子に、誰も手を出すはずがないって、無意識のうちにそう思っていたんでしょう?」
「…違う、よ。そんな、私は…」
「それって、傲慢ですよね。彼を好きなのは私だけで、彼も私以外の人を選ぶなんて有り得ない。そんな独占欲が貴女にはあった。別れたとしても、貴女は彼に執着していて、離すつもりなんてなかった」
「…違う」
「そうですか?私のところにきた時点で、答えは出ている気がしますけどね。まぁいいでしょう。貴女は彼を手放すことを選んだ。そして私はその隙を逃さなかった。それだけのことですよ。要は貴女は自分の慢心から、私に彼を奪われたってことに変わりはない」
残念でしたねと、彼女は嗤った。
私のことを嘲笑うからのように、見下した笑みを作っていた。
「…取るつもりだったんだ、最初から。私から彼を、奪うつもりだったんだ」
「人聞きの悪いことを言わないでくださいよ。言ったでしょう?お互いの同意の上だって。結局悪いのは、全て貴女なんですよ。完璧で、誰からも評判がいい、理想の女の子。学園のアイドル。そんな他人からの評価に絡め取れて、一番大切な人が傷付いていることに気付かず舞い上がっていた、貴女が全て悪いんです」
気に入らなかった。
泥棒猫のくせに、私から彼を奪ったくせに、私のことを全部分かったようにそんなことを口走る目の前の女の子が、私はただただ気に入らなかった。
「貴女にいったいなにが…!」
「良いことを教えてあげましょうかー私、もう彼と寝たんですよ」
一瞬、頭が真っ白になった。
こんな感じでいきまする
近日本投稿予定です