多分、体験になぞってノベルの細部は埋まって行く。願望や欲望のやるせない投影もあるのかな。自作ノベルは今読みたい欲望が無意識に作為をドライブする。その機動力の逞しさ、弄らしさ、切なさといったら..。感動的なほどリリカルだよね。センチメンタルかもね。
19歳のGW明けだった。高校のクラブの先輩と自転車に乗ってすかいらーくをめざしていた。
その夜、同郷のクラブの先輩たちと飲んでいた。ひとりの先輩が嘔吐した。部屋中吐瀉物で溢れた。
「おい、すかいらーくで始発を待とう」
僕とその先輩は新宿のアパートに住んでいた。ここは国立音大の近く..。武蔵境あたりの..過疎なエリアだった。
その先輩は大学に失望したか惰性に流されたのか留年していた。大学1年？
トボトボ歩く。灯りを求めて飛び交う蛾のように。
「おーい。乗れ。乗れ」
「ダメですよ。警察に捕まります」
「大丈夫だよ。ちょっと借りるだけだから」
先輩は放置自転車を物色したようだ。
しかも軽やかに夜中のサイクリングですか？
僕は上京したばかりだった。
この大東京の不思議＆吃驚、その1。夜、自転車に乗っているとおまわりさんが「どこいくの？」職務質問する。その頻度の異常さ..。どうして？
その2。野良犬ゼロなのにノラ猫とカラスはウジャウジャ。どうして？
その3。夕刊配る配達の異常な部数..200.300じゃきかない。凄いな。
その4。新聞勧誘の執拗さ。脅しも平気。怖いよね。
その5。戸別訪問の宗教勧誘。NHKより多い。受信料..スマホもかな？
その1だったの。
「君たち〜」
夜陰からにこやかな制服警官が颯爽と現れた。
「ねーねー。その自転車..」
先輩が漕ぐその自転車の荷台にスタンディングのこの僕。まるで騎馬戦の勇者気取りだった。ヤバい..。
お決まりの車体番号のチェック。そして無線で連絡..やばいぞ、ヤバい。
「ちょっと来てもらえる ?]
現職警官と楽しく語り合いながら派出所まで..。
「学生さん？どこの大学？」