「鬱蒼と茂る木々の中、光る宝石を探してはいけないよ」 美しい物に強欲な女は、美しい物を探していた。 (カクヨム3周年記念選手権 1日目お題：切り札はフクロウ)

女は雨が窓に叩き付ける夜が好きだった。互いに抱き合って眠る夜が好きだった。 女はずっと一つで居たかった。 (カクヨム3周年記念選手権 2日目お題：2番目)

彼等は明日のおまんまの為に誰の下にでも付く薄汚いろくでなしである。 ろくでなし共は今日も肩を並べて馬鹿騒ぎを続けている。 (カクヨム3周年記念選手権 3日目お題：シチュエーショ…

男にとって紙とペンは自由の象徴である。 紙とペンと自由な想像さえ有れば、何処までも自由であった。 (カクヨム3周年記念選手権 4日目お題：紙とペンと○○)

そこは可哀想な子供達の小さな楽園である。 大人になりたいのならば暗黙のルールに従って唯静かに穏やかに生きなさい。 (カクヨム3周年記念選手権 5日目お題：ルール)　

男は今でも、最後の三分間の続きを求めている。 温かかった日々の続きを祈っている。 (カクヨム3周年記念選手権 6日目お題：最後の3分間)

男は夢を見る。 其れが夢だと知った上で、不安定に、不明瞭に、不明確に。荒唐無稽に組み立てられた夢を見る。 (カクヨム3周年記念選手権 7日目お題：最高の目覚め)

人形師の男にとって、その日は特別な日であった。 赤丸が示す節目のその日に、男は微笑んだ。 (カクヨム3周年記念選手権 8日目お題：3周年)

僕は祝福が欲しかった。存在が欲しかった。 其れを与えてくれたのは先生だった。 (カクヨム3周年記念選手権 9日目お題：おめでとう)

作家の活動を応援及び支援する事を目的として作成されたサポート型のお手伝いAI、リンドバーグ。通称バーグさん。 バーグさんと或る名も無い作家の話。 (カクヨム3周年記念選手権 1…

四年に一度の閏年。 それは私達、蝶人が羽化をする年である。 (KAC2020 1回目お題：四年に一度)

白い部屋の中、炬燵に入りながらミカンを齧っていた神は、唐突に思い付いた。 (KAC2020 2回目お題：最高のお祭り)

青年、夢路は迷った先、木々に覆われた静かな一本道を進んで行く。 (KAC2020 3回目お題：Uターン)

夕暮れ時、資料を片付ける青年に教授が尋ねた。 「拡散する種、と言う物を君は知っているかい？」 (KAC2020 4回目お題：拡散する種)

白い壁で覆われた小さな部屋の中、少女は抱えた箱を覗き込む。 (KAC2020 5回目お題：どんでん返し)

家の中。私は今日も、彼等の隣でいつもの様に過ごしている。 (KAC2021 1回目お題：おうち時間)

少女は高い生存能力と薄い危機感を持ってすくすく育った。 今日も少女は怪談と鬼ごっこをして笑うのだ。 (KAC2021 2回目お題：走る)

夢路は友人達に頼まれるままに昔話を始める。 知らない故に直感は働かなかったのだろうある日の話。 (KAC2021 3回目お題：直観)

少女の家の隣には泥の塊があった。 泥は少女の叔母を連れて行った。 (KAC2021 4回目お題：ホラー or ミステリー)

薄暗い屋への中、晩酌をしていた男の元に一本の電話が入った。 (KAC2021 5回目お題：スマホ)

私の創作仲間であり、第一の読者でもある友人たちは一風変わっている。 私はそんな彼等の話を聞いて、執筆したりもする。 (KAC2021 6回目お題：私と読者と仲間たち)

私は微睡みの中で柘榴が落ちる音を聞く。 それは21回目の生まれた年のこと。 (KAC2021 7回目お題：21回目)

私はこの地の神の子である。 私は私のために身勝手に首を落した。 (KAC2021 8回目お題：尊い)

何も無い世界で、私は今日も生き物が作れない。 (KAC2021 9回目お題：ソロ〇〇)

「私ね、ゴールを決めてるの」 薄暗い教室の中で彼女は微笑んでいた。 (KAC2021 10回目お題：ゴール)

二刀流が出来るようになりたい。それがここ最近の少女の口癖だった。 (KAC2022 1回目お題：二刀流)

少女には推しが居た。曰く、とても格好良くて尊い、少女だけの推しだ。 (KAC2022 2回目お題：推し活)

夕焼け色に染まる教室で、夢路は同級生に声を掛けられた。 (KAC2022 3回目お題：第六感)

凄惨たる現場で、少女は一つ溜め息を落した。 (KAC2022 4回目お題：お笑い／コメディ)

曾祖母の八十八歳の米寿のお祝いの時、曾祖母は私にそっと人形をくれた。 (KAC2022 5回目お題：88歳)

愛玩動物たる彼は、嬉しそうに己の羽を差し出してくるので、少女はもう一度大きく溜め息を吐いた。 (KAC2022 6回目お題：焼き鳥が登場する物語)

少女のヒーローは煙草と酒と硝煙の匂いが染みついた男だった。 (KAC2022 8回目お題：私だけのヒーロー)

男は忙しかった。それはもう眼が回るほど忙しかった。 (KAC2022 9回目お題：猫の手を借りた結果)

招待状を持って来たのは馴染みの一反木綿だった。真夜中の運動会、招待状に書かれた文字列を見て、少女が困惑気に一反木綿を見た。 (KAC2022 10回目お題：真夜中)

少女がその日記を見つけたのは、ただの偶然だった。埃被った日記には、最後に、見つけて欲しい、と綴られていた。 (KAC2022 11回目お題：日記)

その本屋には人が埋まっている。噂が噂のまま通り過ぎる事を少女は願っている。 (KAC2023 第1回お題：本屋)

その温かくて柔らかいぬいぐるみは、少女にとっての唯一となった。 (KAC2023 第2回お題：ぬいぐるみ)

地に落ち踏み潰された椿の様に、ぐちゃぐちゃになった人間だった塊が転がっていた。 (KAC2023 第3回お題：ぐちゃぐちゃ) 　

男が夜の散歩に出たのは唯の気まぐれだった。 (KAC2023 第4回お題：深夜の散歩で起きた出来事)

筋肉を付けたい、のだと少女は言った。 (KAC2023 第5回お題：筋肉)

お呪いがあった。幸運が訪れるお呪い。決められた道筋を踏み、学校裏の社に訪れ、社を開け放つと言うお呪い。そう言うお呪いが囁かれていた。 (KAC2023 第6回お題：アンラッキー…

言い訳を考える。どうにか断る言い訳を考える。けれども結局、何も思い浮かばす、男は溜め息を一つ吐いた。 (KAC2023 第7回お題：いいわけ)

鼠は聡明だった。鼠は人に飼われていた。鼠には恩義があった。 鼠には三分以内にやらなければならない事があった。 　 KAC2024 第1回お題「書き出しが『○○には三分以内にやらな…

売りに出されていたのは、大きな家だった。家の場所も郊外の森の奥、詮索を受けたく無い男達にとって丁度良かった。 腐れ縁の男四人、新たな棲家を求めて内見へと赴く。 KAC2024 …

黒い箱があった。黒檀の箱。女の細い両腕に収まる箱。箱はある日、ぽつりと現れた。 　　 KAC2024 第3回お題「箱」

針で刺したような痛みが指先に走る。 咄嗟に手を握りしめ、痛みが落ち着いたところで開けば、人差し指の指先にささくれが出来ていた。 KAC2024 第4回お題「ささくれ」

暗い暗い座敷牢の中、誰も彼もに手離されてそこにいた。家の秘密がけして表に出ないように、深く隠されて、女は一人眠っていた。 KAC2024 第5回お題「はなさないで」

星はとうの昔に汚染され切っていた。外に出るならば、生身のままではまともに息が出来ず、防護マスクを付けなくては肺が焼かれた。 KAC2024 第6回お題「トリあえず」

月夜に照らされて赤色が飛び散る。獣に首を喰い千切られた人間は既に絶命していた。冷たくなったそれを獣が貪れば、色の無かった獣はやがて赤く染まった。 KAC2024 第7回お題「色…

少女は男の事が好きだった。男の目が好きだった。少女を見つめる藤色が、眼鏡の下で本の文字を追う藤色が、好きだった。 KAC2024 第8回お題「めがね」