縁章次郎

何かやらせて貰えませんか。そう学生が言った。名前も覚えていない生徒に、それならばインタビューをして来てくれと録音機を渡せば、頑張りますと前のめりに頷いた。 山で行方不明となった数…

アパートで身元不明の人間が死亡しているのが発見されました。現場はアパートの一室で、警察は何らかの原因で野犬が侵入して来て襲われたと見て調べています。

四十九人の魔女がいる。魔女は不老不死である。魔女は人間を生産し、育成し、管理整備し、廃棄している。 魔女の一人、生産の魔女は人間に殺された。

(第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト)

少女は男の事が好きだった。男の目が好きだった。少女を見つめる藤色が、眼鏡の下で本の文字を追う藤色が、好きだった。 KAC2024 第8回お題「めがね」

月夜に照らされて赤色が飛び散る。獣に首を喰い千切られた人間は既に絶命していた。冷たくなったそれを獣が貪れば、色の無かった獣はやがて赤く染まった。 KAC2024 第7回お題「色…

星はとうの昔に汚染され切っていた。外に出るならば、生身のままではまともに息が出来ず、防護マスクを付けなくては肺が焼かれた。 KAC2024 第6回お題「トリあえず」

暗い暗い座敷牢の中、誰も彼もに手離されてそこにいた。家の秘密がけして表に出ないように、深く隠されて、女は一人眠っていた。 KAC2024 第5回お題「はなさないで」

針で刺したような痛みが指先に走る。 咄嗟に手を握りしめ、痛みが落ち着いたところで開けば、人差し指の指先にささくれが出来ていた。 KAC2024 第4回お題「ささくれ」

黒い箱があった。黒檀の箱。女の細い両腕に収まる箱。箱はある日、ぽつりと現れた。 　　 KAC2024 第3回お題「箱」

売りに出されていたのは、大きな家だった。家の場所も郊外の森の奥、詮索を受けたく無い男達にとって丁度良かった。 腐れ縁の男四人、新たな棲家を求めて内見へと赴く。 KAC2024 …

鼠は聡明だった。鼠は人に飼われていた。鼠には恩義があった。 鼠には三分以内にやらなければならない事があった。 　 KAC2024 第1回お題「書き出しが『○○には三分以内にやらな…

赤い星が落ちてきて、少女の何のことは無い日常は呆気なく崩れ去った。 建物には亀裂が入り、崩壊していく。瓦礫の中を進んでいる時、赤ん坊の泣き声を聞いた少女は、赤ん坊の元に一歩を踏み…

(第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト)

言い訳を考える。どうにか断る言い訳を考える。けれども結局、何も思い浮かばす、男は溜め息を一つ吐いた。 (KAC2023 第7回お題：いいわけ)

お呪いがあった。幸運が訪れるお呪い。決められた道筋を踏み、学校裏の社に訪れ、社を開け放つと言うお呪い。そう言うお呪いが囁かれていた。 (KAC2023 第6回お題：アンラッキー…

快活そうな見た目の少女、蜜日が名前を呼ぶと、物憂げな顔をした男、吉田は微笑んで甘やかな声で返事をした。 (カクヨム文芸部公式自主企画 恋愛ショートストーリー募集　テーマ「沼らせ…

筋肉を付けたい、のだと少女は言った。 (KAC2023 第5回お題：筋肉)

男が夜の散歩に出たのは唯の気まぐれだった。 (KAC2023 第4回お題：深夜の散歩で起きた出来事)

地に落ち踏み潰された椿の様に、ぐちゃぐちゃになった人間だった塊が転がっていた。 (KAC2023 第3回お題：ぐちゃぐちゃ) 　

その温かくて柔らかいぬいぐるみは、少女にとっての唯一となった。 (KAC2023 第2回お題：ぬいぐるみ)

その本屋には人が埋まっている。噂が噂のまま通り過ぎる事を少女は願っている。 (KAC2023 第1回お題：本屋)

私は引き金を引く。今日は眠れるだろうか、そんなことを考えながら引き金を引く。

何処かで打ち捨てられた一頁。

されこうべの面をしたのっぽと少女は、夜の中、影を誘き出す。 (ツクール×カクヨム　ゲーム原案小説オーディション2022)

少女がその日記を見つけたのは、ただの偶然だった。埃被った日記には、最後に、見つけて欲しい、と綴られていた。 (KAC2022 11回目お題：日記)

招待状を持って来たのは馴染みの一反木綿だった。真夜中の運動会、招待状に書かれた文字列を見て、少女が困惑気に一反木綿を見た。 (KAC2022 10回目お題：真夜中)

男は忙しかった。それはもう眼が回るほど忙しかった。 (KAC2022 9回目お題：猫の手を借りた結果)

少女のヒーローは煙草と酒と硝煙の匂いが染みついた男だった。 (KAC2022 8回目お題：私だけのヒーロー)

「もうすぐお別れだね」 そんな事を言って、少女は傍らに座る存在と小指と小指とを絡めた。 (KAC2022 7回目お題：出会いと別れ)

愛玩動物たる彼は、嬉しそうに己の羽を差し出してくるので、少女はもう一度大きく溜め息を吐いた。 (KAC2022 6回目お題：焼き鳥が登場する物語)

曾祖母の八十八歳の米寿のお祝いの時、曾祖母は私にそっと人形をくれた。 (KAC2022 5回目お題：88歳)

凄惨たる現場で、少女は一つ溜め息を落した。 (KAC2022 4回目お題：お笑い／コメディ)

夕焼け色に染まる教室で、夢路は同級生に声を掛けられた。 (KAC2022 3回目お題：第六感)

少女には推しが居た。曰く、とても格好良くて尊い、少女だけの推しだ。 (KAC2022 2回目お題：推し活)

二刀流が出来るようになりたい。それがここ最近の少女の口癖だった。 (KAC2022 1回目お題：二刀流)

ぽっかりと大きな穴が開いていた。大きな穴はどこまでも深く、深く、底の見えぬ穴だった。

私は体調をよく崩す人間だった。だから私は、体調を崩すたびに赤いきつねを食べていた。 (「赤いきつね」「緑のたぬき」幸せしみるショートストーリーコンテスト)

打ち捨てられた何かの切れ端。

「私ね、ゴールを決めてるの」 薄暗い教室の中で彼女は微笑んでいた。 (KAC2021 10回目お題：ゴール)

何も無い世界で、私は今日も生き物が作れない。 (KAC2021 9回目お題：ソロ〇〇)

私はこの地の神の子である。 私は私のために身勝手に首を落した。 (KAC2021 8回目お題：尊い)

私は微睡みの中で柘榴が落ちる音を聞く。 それは21回目の生まれた年のこと。 (KAC2021 7回目お題：21回目)

私の創作仲間であり、第一の読者でもある友人たちは一風変わっている。 私はそんな彼等の話を聞いて、執筆したりもする。 (KAC2021 6回目お題：私と読者と仲間たち)

薄暗い屋への中、晩酌をしていた男の元に一本の電話が入った。 (KAC2021 5回目お題：スマホ)

少女の家の隣には泥の塊があった。 泥は少女の叔母を連れて行った。 (KAC2021 4回目お題：ホラー or ミステリー)

夢路は友人達に頼まれるままに昔話を始める。 知らない故に直感は働かなかったのだろうある日の話。 (KAC2021 3回目お題：直観)

少女は高い生存能力と薄い危機感を持ってすくすく育った。 今日も少女は怪談と鬼ごっこをして笑うのだ。 (KAC2021 2回目お題：走る)

家の中。私は今日も、彼等の隣でいつもの様に過ごしている。 (KAC2021 1回目お題：おうち時間)

私にとって役割が「要る」ことで、おにぎりを握ることが「大事」なことなのだろう。