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筑前筑後通信(3)異・雨月完結あとがきの巻

※このあとがきは、「小説家になろう」での完結後に書いたものです。



 この物語は、雨月物語の菊花の約をモチーフに、何か成長物語を作れないか。それをスタートに書きました。
 男色で成長。難しい二つを頭を捻って産み出したのが、この「異・雨月」です。
 僕は書き出したらゴールまでは一直線なのですが、この作品は難産でした。というのも、主人公が動いてくれない。動いてきたら、今度は金魚の糞のような狂言回し。やっと自ら動き出したのは、親父が死んでからでした。
 何事も煮え切らず、剣は人並み以上だけどずば抜けてもなく、かと言って凄い切れ者でもなく。恋愛も楊三郎を吹っ切るように結婚。しかも楊三郎に別れも告げず。そして、その楊三郎を殺害するという。まるで別れを言えずフェードアウトをする情けない男。そして、〔志〕がない。佐幕のように働くけど、別に佐幕でもなく、勤王でもない。
 ある意味、イマドキな男子です。
 そうした筑前作品史上、最も微妙な主人公でしたが、書き終えてみて「これはこれで良かった」と思えます。というのも、何となく成長したと思えましたから。
 人生はままならぬもの。自分の黒歴史という過去と決別し、新たなステージに進むのもまた人生ではないでしょうか。
 睦之介にとって、楊三郎は黒歴史。彼を殺す事で、睦之介は大須賀重蔵として、新たなステージに立ったのです。そう作者である僕は感じました。
 また、この作品は幕末を舞台にしましたが、「本朝徳河水滸伝」と銘打った、オリジナルの江戸時代。ある意味で異世界時代劇です。
 登場する怡土藩も、隈府藩も荻藩も存在しません。ただモデルはあり、皆様もお気付きでしょうが説明しますと、
 怡土藩→藩主としたのは糸島の豪族原田氏。怡土地方に覇を唱えましたが、秀吉により改易されました。地勢も糸島をモデルにしました。
 隈府藩→藩主としたのは、かの有名な菊池氏。戦国時代には滅びました。隈府藩の地理は熊本藩から、特色は薩摩藩から拝借。複雑ですね(笑)
 荻藩→藩主としたのは、大内氏。モデルは長州藩。萩ではなく荻です(笑)大内氏が戦国時代を生き残ったという設定で、その家臣団には毛利や小早川、吉川から陶、青景、江良もいます。
 という、感じでしょうか。
 これからも、こうした世界観を育て、最後は安倍晴明が呼び出した次元獣と熱いバトルをさせる予定です(嘘)
 話はそれましたが、この物語を書いて、自分の長所や短所が見え、解消すべき課題に気付きました。
 そして、それは読んで下さった皆様のお陰です。このような素人の作品を時間という対価を払って読んで下さいました事、心から感謝致します。そしてこれからも、何卒宜しくお願い致します。

 なお、この続編は未定ですが、書くならば重蔵となった睦之介と種堅のラストバトルをと考えております。

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