「サフィー、どうだった?」
エンハルトは職務室でサフィーナと話す。
「凄く可愛かったわ、ハルトに渡すのが嫌なくらい。」
「それは困るな。」
苦笑いするエンハルト。
「でも失敗でしたわよ、昨晩の記憶無かったみたい、呑みすぎちゃったようね。」
「少しくらい呑んでた方が・・・と思ったが、チハルの酒の弱さが裏目に出たか。」
「急ぐ事はないでしょう?婚姻の儀はまだ先ですから。」
「まぁそうなんだが、チハル達は初夜に見られる事を異常に嫌がるらしいからな、俺とチハルの時はサフィーなら・・・。」
「他の貴族でしたら多少は融通が効くでしょうけど、王族ですものね、なんなら3人でもよろしくてよ?」
クスクス笑うサフィーナ。
「俺が持たねぇよ。」
ソファーの背もたれにそり返りながらエンハルトが呟く。
「チハルは乙女でしたもの、初めての行為で見られるのは辛いかもしれませんわ。」
「尚更サフィーに頑張ってもらうしかないな。」
「いっその事ハルトが教えてあげれば良いじゃない。」
「それも考えたが、見られながらと言う根本が解決されないだろ。」
溜息を吐くエンハルトを見てサフィーナは微笑む。
「優しいわね。」
「愛してるからな。」
「あら、羨ましい。」
「サフィーの事も愛してるぞ?」
「ありがとうございます。」
クスクスと笑うサフィーナ。
「嫡子男性は良いですね、初体験の女性を準備されるのでしょう?」
「・・・良い事あるか、それも嫡子の儀式だ。」
「あら、そうですの?」
「あぁ、薄暗い部屋に仮面を付けた女性とやるんだぞ?」
「らしいですね、どんな方でしたの?」
「言えない。」
「あら、ハルトも?」
「お前他にも聞いた事有るのか?」
「えぇ、お兄様に。」
「答えなかっただろ?」
「はい、頑なに口を閉ざしました。」
少し悔しそうに言うサフィーナ。
「もし相手がわかっても俺達は言ってはいけないルールなんだよ。」
「その女性の口からも漏れないのですか?」
「絶対に漏れない。」
「・・・ヒントを!」
物凄く気になったサフィーナは食い付く。
「心配しなくてもサフィーナも知る事になる。」
「知る事に?」
「あぁ、チハルもな。」
「チハルも?どう言う事ですか?」
「これ以上は言えないな。」
「・・・。」
ムスッとするサフィーナ、エンハルトはそれを見て笑みを浮かべ、一言伝える。
「お前達が長男を産んだら分かるよ。」
エンハルトは仮面を付けた女性を思い出す、長年一緒に暮らし、一番そばに居た女性を。
「・・・それは・・・いえ・・・えぇぇ・・・。」
「言うなよ?」
「言えません。」
「だろ?」
「それでは、仕事に戻りますね。」
「あぁ、ご苦労様・・・。」
労うエンハルトはサフィーナを見る。
「何ですか?」
「いや、サフィーは・・・いや、何でもない。」
「そうですか。」
サフィーナは扉のノブを握る、そしてエンハルトに振り向き微笑む。
「私も乙女ですわよ、安心して下さいな、旦那様♪」
サフィーナはクスクスと笑いながら出て行った。