とある企画に参加しようと思ってボツにしたやつ。
『炎上』
https://kakuyomu.jp/works/16818093078495611470 今回、作家さんが燃えます!(物理)
下のはボツのボツです。かさはら、こと笠原さん目線。最初は笠原さんが主人公でした。
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文芸部に入ったのは楽そうだったから、それ以外にない。
必ず何かしらの部活に入らなければいけないというクソ規則のある高校に入ってしまい、さてどうするかと適当に部活紹介の冊子を眺めて、そんな理由で入部した。
赤坂はそこにいた。同じ新入生でクラスも一緒。同じ班になることも多く、何となくつるむようになった。
部活では図書室の漫画ばかり読んでいた。うちの文芸部はそこまで真面目な部ではなく、図書室にある本(漫画含む)の感想文さえ書いて提出すればそれで許されていた。にも関わらず、赤坂は小説を書いた。
原稿用紙に、メモ帳に、スマホに。
明くる日も明くる日も赤坂は書き続け、俺や他の部員に見せてきた。話はそれなりに面白い。でも漫画よりは魅力的じゃなかった。
ただ、そんな感想は俺だけで、他の部員は赤坂が新作を書くたびに異様に盛り上がり、短編を公募に出すとけっこうな頻度で図書カードや賞状をもらっていたが、赤坂が喜んでいる所は、何故か、見たことはない。
まだだ、まだ駄目みたいだと、赤坂はよく言っていた。
何が駄目なのかもよく分からないまま卒業後もつるみ続けて数年、気付いた時には赤坂は作家になっており、本を出すたび俺に送ってきてくれたが、どれも好みには合わなかった。感想を求められて正直に伝えるたび、赤坂は無表情になる。
よく共に飲んでいると、次の小説の構想を聞かせてきたが、そんなことより仕事の話の方が俺には興味深かった。担当編集と些細なことで殴り合いになったとか、本を作る過程で起きたトラブルの話とか。それらについて訊ねるたびに赤坂が不機嫌になるものだから、次第に口を噤んで、黙って赤坂の話を聞くに徹した。
俺といる時の赤坂は、だんだん悔しそうな顔をするようになる。俺が赤坂の小説に興味を持たないからだろうな、と後になって気付いたけれど、持てないものは持てないのだからそこは諦めてほしかった。だけど赤坂は諦めずに語り続け、新作を送り続け、そして知らん男と焼け死んだと。
そういえば赤坂は言っていた。
誰かに見られている気がすると。ファンじゃねえのか、なんて返してまともに取り合ってやらなかった。男なんだから腕力でどうにでもなるだろうって。実際はどうにもならなかったんだな。
ここ数ヵ月は視線を感じなくなったみたいで、赤坂は心から安堵しているようだった。良かったの一言で終わらせた。
終わらせるべきじゃ、なかったんだよな、赤坂。
よく分かったよ。本当によく分かった。
適当に読んできた赤坂の本に埋もれながら、見上げる天井はぼやけてよく見えなかった。