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毒を吐くということ。音楽の批評ブログが好きだという話。


活字中毒なのでほっといたらなんでも読んでしまう。なんでも読むんだけど、読むんだったら面白くて、ちょっとだけ毒の効いた文章が好きだという話。


悪口と批評と毒はそれぞれ違う。悪口は主に主観によって吐かれるので、本質的には自らのコンプレックスを他人に向けて吐露しているのと等しい。見ていると悲しくなるので個人的にはあまり好きではない。

批評が悪口と違うのは客観性があるかどうかと、比較対象の軸が批評者のなかにあるかどうか。軸というのは総合的な知識でも個人の信念でも、文化的規範であってもいいし世代という空気でもいいし、なんでもいいんだけど、ここがぶれると途端に批評文として弱くなる。個人攻撃や悪口と批評を分けるのは、最終的には建設的な意見を出せるかどうかであると思う。

批評のふりをした悪口もたまに見る。「あなたのために言ってるんだからね」と言いつつ自分の立場を守りたい批評風攻撃のケース。あまりいい趣味とは言えないと思うし、やはり自分の弱点を人目に晒すことにもつながって結果的にはマイナスになると思うので苦手。

毒舌というのは上記のふたつの特徴を両方兼ね備えて見えることもあり、難しい。Mステのアイドルのパフォーマンスを見て、ファンの目の前で「口パクですね」と屈託なく言ってしまうタイプは自覚なく毒を盛って周囲を傷つけるタイプだから気をつけようね。

見たままを言うと毒舌になることもあるし、単なる悪口になる場合もある。

リアム・ギャラガー、マツコ・デラックス、有吉弘行。毒舌でご飯を食べている人、というとこの辺のイメージが強い。

毒舌。それは諸刃の剣である。例えば太っている人に「太いですね」と言えば「言われんでも知っとるわい」となって良い結果にはならないだろう。ところが裸でパレードする独裁者を見て、「王様は裸だ」と言ってしまえばその瞬間だけ英雄になることもできる(時勢さえ受け入れてくれれば)。紙一重なのだ。毒舌の根本は、本質を正しく突いているかどうかにある。指摘した正しさが多くの人に支持されれば愛される毒舌となるし、言わなくても良いことだったとすれば単なるデリカシーのない人に分類される。


この人はどっちだろうな。私は好きなんだけども。

Basement TimesというJ-POPの批評サイトがある。炎上すれすれの毒舌記事がすごい。中身がペラペラの時もあれば(バンドマンのマッシュルームカットの見分け方の記事とか)、酔ってんのかな? 酒の勢いを借りて書いたんですか? そこまで言っても大丈夫なのか。全方位を敵に回しそうな毒舌をふるっておられるけれども。その方向には味方がいたのでは……と心配になる時もある。ここのライターさんの石左氏が私は結構好きである。エッセイで触れたmiwaの記事もこの人の手によるものだった。バンドマンのモテたいと、サブカル女子の下心をすごい鮮やかに暴いていくので、おいおいほんとに大丈夫かよ、刺されたいの? と思ってしまう。貞操観念の薄い男女を作中に出したい人たちは読むと参考になるかもしれないのでオススメしときます。

この文章好きだな、という一定のリズムというか波長というかがあるんですが、更にそれを「好き? そんなはずない、むしろ嫌いだったらどうする?」っていう動機から延々と読み漁りドツボにハマる行動パターンが形成されていて物語的にも救いようのないパーソナリティの持ち主だな、ということを最近自覚しつつあります。悲しいですね。もっと素直な心の清い女性に生まれたかった。

そんなわけで懲りもせず次々と過去文を読み漁った結果、みなさん大体見当はついてるかもしれないんですが、やっぱり好きでした。私のエッセイを読むなどしてモテをこじらせた男性の生態をもっと間近に観察したいと思っている麗しき女性がいらっしゃったら、このライター氏のテキストサイト夏目新舎を読むと良いと思います。文章に無駄に勢いがあるのと、自らの恥部を晒していく姿勢が一周まわって男らしい。
これとか。
http://natsume.me/mother-smartphone/
もう石左氏というか洋子氏のファンになりそうです私は。めちゃくちゃ可愛くないですか石左氏のお母さん。地下室か夏目か忘れたんですが「おいおいおかん、ギターとベースの違いもわからないのか」っていう語り口から始まる記事があって、結構好きでした。


批評眼の鋭い人はメンタルをいかれやすい。他人の粗に厳しい人は往々にして自分を棚上げしてものを言うものだけども、たまに自分を棚上げし忘れたまま延々と粗を見つけてしまうタイプの人がいる。他人の粗にも、自分の粗にも同じくらい敏感な人。社会構造の欠陥と自分の精神構造の欠陥に同じくらい注意を払ってしまう人。

石左氏の毒舌は針のむしろで苦しみながら捻りだされたものという感じがして、私には非常に好ましく映る。同時に、もっと自分のことをおだいじに、という気持ちにもなる。

強いから弱くなるのか弱いから強く見えるのか。みたいなことだと思います。
どんな動機からでもそれなりの覚悟を持って紡がれた文章は私は好きです。入眠障害持ちはアルコールのちからを借りずに就寝までこぎつけるのが一苦労。おわり。

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