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SFとジェンダーと戦争と

 40年前は「一人前の男はタバコくらいたしなむもの」という時代で、小学校の先生が教室で普通にタバコを吸っていました。未来(てか現在)にこれほどまでタバコの肩身が狭くなることをイメージしたSFは無かったと思います。
それに比べて女性の社会進出は典型的なSF表現でした。男の子むけアニメのヒロインは長く「紅一点」でしたが、ガンダムではそれが3人に増えて、これはSFなのだ、と衝撃をうけました。
 ですが実際の未来はSFとは細部で異なる実装となります。「女性枠」で入社した人が普通に男性以上の仕事をするし、無闇に広報誌に登場する機会も自然になくなる。筆者が10年ほど前に書いた作品が40年前の感性と予想から抜け出ていないことに恥じ入ります。
 銀河英雄伝説は謎です。40年前に書かれた時点で、描写された社会や政治のあまりの古臭さは、まあ、そういう意図だから、と繰り返し言い聞かせでもしないと納得できないレベルでした。当時の友人の言葉ですが、「銀英伝に出てくる天才って今の普通の人だよね」というのは衝撃でしたが、岡目八目とはいえ、改めて読み直すとその通りです。
 なぜ謎なのかといえば、政治や国際情勢についてあまりに的確に予想(?)しているから。若者が政治に関心を失い、メディアは政治家の汚職を報じなくなり、不祥事を繰り返す雄弁な政治家が票を集める。独裁者があるとき突然戦争をはじめ、無誘導の砲弾の応酬にさらされ、数百年の歴史を持つ都市が次々と廃墟になる。
 そして筆者の所属する組織でも日本やロシアと同じような状況が発生しています。もはや未来予測の精度以前に、現在が分析できていない。それは、40年前にこうあるべき、こうなってはならない、となんとなくみんなが共有していたビジョンが間違っていたからでしょうか。それとも、ビジョンの成立を妨げる、知られていないなんらかの力が働いているからなのでしょうか。
 いずれにせよ、筆者は小説を書いている場合ではなくなりました。またそのうちに。

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