• 現代ドラマ

金魚のこと。

 金魚が死にました。ムーンタワー(むんたわと私は呼んでいます。かわいいので)という私が今書いている小説の登場人物ではなくて、現実世界で飼っていたほんまもんの金魚が。
 べつに私が育てていたわけではないのです。母親が今少し鬱気味で、それがちょっとでも良くなれば、という希望的観測で飼い始めたのです。3匹です。それが1週間後に2匹になって、その次の日に1匹になって、昨日でとうとうアガサ・クリスティになりました。そう、いなくなった。
 母親はすごく落ち込んでいます。生き物を飼うことの意味、責任、そういうものがのしかかって来ています。私から飼おうと言ったわけではなく、母親がYouTubeで見て飼いたいと言ったので。母は上手く眠れなくて3時ぐらいに起きてしまったときに何かすることが必要でした。それが金魚を見ることだったのです。
 いっときは金魚は良くなっていたのです。みんな白雲病という病気にかかっていて、最後には呼吸ができなくて窒息死してしまうそうです。前の2匹はそれでなくなってしまいました。Google先生に教えてもらったその病気だと気づいてから、最後の1匹は塩浴させ、父親が買ってきた薬浴にすぐ切り替えました。金魚はすごく元気になりました。そしてその2日後の朝、金魚はあまり動かなくなっていました。そして昨日の昼、母が仕事から帰ってきたときに、金魚はひっくり返ってその腹を晒していました。
 想像してみてください。あなたが飼っている犬、猫、兎、鳥、爬虫類。或いはそれ以外のペットたち。彼ら、彼女らが死んでしまったら。命を飼うという行為はとても神聖で、同時にすごく残酷なことです。私は当分、何も命を預かることはできないと思います。

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