子供の頃の夏のような天気だった。
私が少年野球で白球を追いかけていたころの夏は、ちょうど今日のような日和だった。
気温は30度に届くか届かないか、晴れた空が広がって、それでも試合をしても汗びっしょりにはならない。
敵の猛攻を受け、守りが長くなっても,水分補給など考えたこともなかった。
チェンジになって、ベンチに戻って水筒の水を飲む。スポーツドリンクなんかなかったが、それで充分しのげた。
あんな、穏やかな夏もあったのだ。
「きょうは暑かったねえ。30度あったよ」
夕方、家に帰ると、母がそんなことを言ったのを覚えている。
あのころは、美しかった。
エッセイ集「夕暮れ時の幻想。すぎた日々の夢」はこちらです。
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