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黎明のアヴィオン 第2章完結に寄せて

皆さまこんばんは。新井です。
本日、無事拙作「黎明のアヴィオン」の第2章が完結いたしました。
まずは毎週応援をくださっている皆様に、心よりの感謝を申し上げます。連載を続けられているのはひとえに皆様のおかげです。

さて、本日は2章完結に寄せて、あとがきのようなものを書かせていただければと思います。


 第2章は、ハイドラとクピド、QPシリーズを中心に人と命の在り方を問う物語です。

 ハイドラは人とアザトゥスが混ざった身体を持ちますが、誰よりも純粋で善良なキャラクターです。ハイドラは人間の性は善である、という事を念頭に置いて造形しています。まっさらな彼の記憶領域に最初に書き込まれた概念が「自分は悪性の化け物である」という事実。母が自分を虐げるのも、研究所で辛い思いをするのも、全部自分の罪ゆえであると考えているのがハイドラです。
 15話では“ミルコが洗脳した”とアサクラは断じていますが、ミルコはハイドラに既に刻まれていた概念に乗っただけだったりします。

 クピドはクローンで、フィジカルもメンタルもとても強かったオリジナルの素養をそのまま受け継いだ試用品。薄々お気づきかと思いますが、彼女が生まれた時にはまだアサヒナも生きていて、アサクラも研究所にいました。クピドは母(アサヒナ)の知識や記憶もそのまま引き継いだQPシリーズのオリジンです。2章に登場する子供たちの中で、彼女だけは大人の概念と、世界の理を理解している。その上で彼女が研究所での扱いに甘んじていたのは、諦めてしまっていたからです。アサクラのアサヒナへの思いを識っていた彼女は、アサヒナの死後アサクラが姿を消したことでその愛が自分には向いていないと考えました。それでも彼女にとってはアサヒナが母で、アサクラが父です。
 6話でクピドが「クピドと呼んでくれる人がいる」と言っているのは、研究所ではほとんどその名が呼ばれていない証左でもあります。両親が姿を消してから久しく呼ばれていなかった呼び名を抱え込んでいる程度には、彼女は父のことを想っているのです。

 2章のもう一つの軸は、「ユウは特別な人間ではない」ということです。彼を英雄足らしめているものは何一つとして本当の意味での彼の功績ではありません。その事を本人も痛いほど理解しているはずなのですが、1章で再度の成功を収めてしまったせいで妙な使命感のようなものが芽生えてしまい、2章ではひたすらに空回りし続けています。
 ある意味これは当たり前のことです。だってこの人新兵に毛が生えたようなもんですからね。シエロは本物のエースですが、判断は自分がすることではないと思っています。だってユウが乗ってるから。
 そういう意味では今回のユウの失敗は、どちらかといえば采配したシキシマの失敗です。フライトリーダーっていきなりなるものじゃないですからね。
 彼が本当の意味で成長していくのはこれからです。2章ではぐだっぐだでしたが今後も是非見守ってあげてください。

今章には、幾つかこの物語の核心や結末に触れる伏線も隠していたりします。よかったら探してみてください。

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