巻き込まれ次話の構想です。
まだ簡単なシーンのみですが、
・New blave
・大魔法士の弟子
このどちらかが次話になる予定です。
好み等あれば、是非ご意見頂きたく思います。
~ New blave ~
優斗は話を聞いた後、考える仕草を取ってから爽やかに笑った。
「たまには僕じゃなくて、代わりの奴を連れてってもらおうかな」
正樹が引っ掛かったのなら、それは正しいはずだ。
そして答えを導き出せるのは何も大魔法士だけではない。
「いるでしょ、僕と〝同等〟の奴が」
◇ ◇
新たな勇者の誕生。
それが正しいか否か、判断するのは自分達ではない。
だからこそ修は気軽に答える。
「いいんじゃねえの? 名乗りたきゃ名乗ればいいさ」
元々、異世界人の勇者以外は後乗りで名乗ったものだ。
新たな勇者の誕生というのは、出来る出来ないで言うのなら出来る。
ただし、
「名乗ってどうにかなるもんじゃねえだろ、勇者ってのは」
最古の召喚陣、その四つが勇者の召喚陣として機能しているのは破格の能力を与えるが故だ。
つまり派生の召喚陣からは、言うなれば格落ちの異世界人しか出てこない。
「それに誰も分かってねえじゃん」
今の異世界人は確かに、そこそこ強いのかもしれない。
けれど、異世界人に囚われているからこそ気付いていない。
「正樹だって気付いてんだろ? 本当は誰がこの国を守ってるのかってよ」
「まあ、ね。ボクだって彼が勇者に持ち上げられるのは凄く違和感があるよ」
「あいつ、おちゃらけてるけど相当の実力者だぞ」
修と正樹は、とある人物に視線を送る。
そこにいるのは、どこにでもいるような少年ではある。
しかし、
「異世界人の孫ってのは、そりゃ異世界人より目立たないかもしれないけどよ。だからってそれが、正しい判断をしない理由にはならねえだろ」
◇ ◇
修は目前にいる相手に思わず笑いが込み上げた。
「……ははっ」
今まで相手をしてきた奴らより雰囲気が違う。
纏っている空気が全く違う。
「邪竜ファルニト……だってよ」
だというのに修は笑いが込み上げて仕方ない。
「面白いじゃねえか。魔竜王――最強の魔王の配下ってか」
強いのは分かった。
国を滅ぼせるほどに強いことも理解している。
それでも、それが内田修を相手取るに足るかといえば違う。
「だったら俺も見せてやるよ」
修は魔法陣を折り畳み、神剣と成し、前へと突きつける。
「現実に残ったからこその〝幻〟を」
伝説と幻。
伝説は現実から消えたからこそ伝聞となり、御伽噺となった。
幻は現実に残ったからこそ消えてしまい、その姿を見せなくなった。
けれど今、伝説と相並ぶ〝幻〟はここにいる。
揺るぎなくこの世界で、威風堂々と立っている。
だから、
「――この〝俺〟に勝てるもんなら勝ってみせろ」
~ 大魔法士の弟子 ~
「貴方、誰の弟子になろうとしているのかしら?」
目の前の少年の思想がキリアには分からない。
「だってそうでしょ? わたしが弟子に相応しくないってことはつまり――大魔法士の判断が間違ってる。そう言ってるわけよね」
意味合いとしてはそうなる。
大魔法士が間違っていると彼は言いたいわけだ、と。
「先輩の弟子になる条件すら分からない人間が、よくぞほざいたわ」
勘違い甚だしい。
大魔法士の弟子とは即ち、才能の有る無しではないというのに。
「あとね、貴方の言葉にある隠れた意味合いを気付けないとでも思ったのかしら?」
キリアを相応しくないと断言し、自分こそが相応しいと吠える。
「どうして二人目になろうとしないの? どうして自分だけが弟子だと思いたいの?」
それが意味することは単純明快だ。
「貴方は弟子であることに誇るのではなく、自慢したいんでしょう? 自分だけが大魔法士の弟子だ、って」
言葉を突きつけた後、キリアはふっと笑った。
「貴方、今――“揺れた”わね」
◇ ◇
優斗はまるで興味なさそうに声を発する。
「大魔法士に最も相応しい弟子だと確信しているだと?」
そう言って優斗は少年に目をやると、くつりと嗤った。
「僕がどんな人間を弟子にしたいと思うか、分かった上での発言なんだろうな?」
問い掛けたところで、どうせ答えは間違っている。
だというのに優斗は嗤ったまま、さらに問いを重ねた。
「ほら、答えてみろよ。僕は一体、どのような人間を弟子にしたいんだ?」
さらに突っついて答えを引き出させる。
そして少年から出た答えは『才能』というものだった。
優斗は思わず真顔になって、
「僕のことを馬鹿にしてるのか?」
至極真剣に、何をほざいているのかとばかりに言い返した。
「才能だの実力だの、そんなものは僕から見ればどんぐりの背比べに過ぎない。考えも弟子となったからには変えてやる。だから僕が最も重要とするのは意思だ」
大魔法士の弟子になる方法とは一体何か。
その答えは一つしかない。
「“強くなりたい”。その意思に不純物が混じれば、その時点で僕の弟子たりえない。相応しいだの相応しくないだの、そんなどうでもいいことを混ぜた時点でお前は駄目だ」
◇ ◇
「――八曜。この世界の中で最高峰の聖剣だ」
優斗は手にしたショートソードをキリアに向けて放り投げる。
キリアはそれをキャッチすると、まじまじと優斗を見た。
「簡易的な聖剣もどき。僕はあれを何の意味もなくやらせたわけじゃない」
人によっては便利だからやらせたように見えるだろう。
けれど決して、それだけではない。
「聖剣は誰でも使える。けれど誰でも本当の主になれるわけじゃない」
十全に扱うために。
その力を余すことなく振るうには、相応の関係が必要となる。
「何故なら加護であろうと精霊の意思が関わってくるから。そういうことよね、師匠?」
「その通りだ。今まで無視してきたからこそ、改めて精霊と対話する時間を設けた」
キリアは最初、精霊術を無視していた。
威力が弱いからという、それだけの理由で。
けれど現在は――優斗と出会ってからは違う。
「だから今なら、問題なく使える」
◇ ◇
「わたしは先輩のように自由自在に扱えるわけじゃない。時には傷つける時だってある」
キリアは八曜に語り掛けるように撫でて、そして抜き放った。
「というかたぶん、わたしって扱い荒いわよ」
優斗のように華麗に剣を振るえるわけではない。
誰かのように上手く剣を扱えるわけではない。
「精霊についてもそう。昔のわたしは精霊術なんて必要ないって思ってた」
威力が弱いから。
ただ、それだけの理由で必要ないと思っていた。
「ねえ、八曜。それでもわたしが主でよかったって、そう思ってほしい」
ぎゅっと柄を握りしめ、真っ直ぐに相手を見据える。
「先輩の聖剣であるよりも、わたしの聖剣でよかったって思ってもらいたいわ」
右足を少し前に出し、右手は力感無く八曜を握っている。
それが大魔法士に連なる構え。
「だから――」
師匠と瓜二つの構えを取った弟子は、輝きを放った八曜に宣言するように言い放つ。
「――手伝って、八曜。わたしは今から貴方を用いて、相手を圧倒するわ」