与えられたしあわせ
「妹よ。俺は思うのよ」
「はあ」
「俺って教師やってんじゃん?社会人なんだけど、社会に入る前のやつらを相手にするだろ?」
「生徒って言えばいいだろ」
「そいつらを相手にしてると、俺は果たして社会に貢献しているのかってときどき思っちゃうのよ」
「ああそう…」
「生徒たちって、大人の教師が作ったステップとコミュニティの中でのほほんとしてんじゃん?」
「それを授業と部活って言うんじゃ」
「のほほんとしてんなぁ…とか見てると、その中で泣いたり笑ったりするのよ。まぁドラマになりますよ。色々大変なんだよ」
「はあ」
「卒業して、大人になって、いざ働いてみるとさ、『作る』側に回るからさ、俺は生徒に機会を与えているに過ぎないなって。でも肝心の作り方なんて教えてないから、卒業後のアイツらが不憫でならない。アイツらを社会にぽーんと投げ出すなんて、そんな大儀なこと、俺には取り組めない」
「どうしたどうした」
「俺、教師向いてないのかもしれない…」
「考えすぎ考えすぎ。…ねぇ、兄さんは、学生だった自分と今の自分、どっちが楽しいって思う?」
「なんだよ急に」
「私は今の自分が楽しくて最高よ。今はぶっちゃけ下積みたいなもんだから、新しく始めることが大風呂敷を広げるみたいに思われちゃってるかもしれないけどさ」
「お前、前向きだなぁ…」
「ちゃんとお金もらえるし、時間だって自分で確保できる自由があるしね」
「お前を生徒に俺の妹って紹介して特別授業させたい」
「さっきの会話をそのまま授業にコピペしたら?」
「コピペってやめろよぉ。今コピペで頭抱えてんだからよぉ」
「尽きないね」